鈴木 勝 研究室
ホーム 私の教育分野 私の研究分野 プロフィール 趣味・関心 リンク一般 SUZUKI Laboratory

 

                                                         2003年 11月14日

  会 員 各 位                         大阪府日中経済交流協会                                                                                          理事長 原田 修

 

第204回(11月例会)のご案内 (レジュメ添付)

 例年なら秋の深まりと共に、中国へ旅する団体客でフライトの大半は埋まっていたものですが、今年は6月のSARS終息宣言の後も、ビジネス関係者の往来でフライトは従来以上に活気をとり戻しているものの、日本からの観光目的の訪中団はあとひと冬の状況を見定めた上でと、まだまだ立ち上がる気配はみれません。

 しかし、このSARS禍がきっかけになって、中国旅行のあり方を見直す新しい動きも見られるようになって来ました。これは日中両観光業界の努力もありますが、これまでのような“お仕着せ”の旅にあきたらない、“プラン・ドウ・シー”を自分たちのグループや個人で作り上げ、実施しようという若ものたちのニーズが主流になってき始めているからです。

 中国からの訪日団も量的に増える傾向にありますが、これはまだ日本側の規制などが多くて、その受け入れ対応に問題があります。日本でも60年代から70年代にかけて日本の中小企業家の視察旅行や“ノーキョウ”が世界に“雄飛”?した結果として一皮むけた日本の“国際化”が進んで行ったように、中国の訪日団も“百聞は一見に如かず”と形式にこだわらずいろんな形態とルートで大勢迎え入れることの出来るような、日本の“官民”の前例にとらわれない対応を期待したいものです。

 鈴木先生は、JTB中国代表をはじめとする同社国際業務歴任のあと、来春はじめての卒業生を社会に送り出される観光学術分野の第一人者で、日中の経済同様“双方向”でとり組まなければならぬこれからの日中観光業界の動向について多くの示唆を与えていただけるものと思います。

 関係旅行業界の方もふくめお誘いあわせの上、多数のご参加をお待ち申し上げる次第です。
なお会員の方には、粗餐ではありますが軽食(カレー&ドリンク)の用意をさせていただいております。ご利用ください。
 

■と き:11月28日(金)軽食 PM5:456:20(会員交流)
              講演 
PM6:307:30プラス質疑応答

■ところ:軽食 大阪駅前第2ビルB1 喫茶店「ルビアン」
          下りエスカレーター前 
Tel06-6346-5333
     講演 大阪駅前第
2ビル5F 大阪市立総合生涯学習センター
          第4研修室、     
Tel06-6345-5000

   講 演:
「中国のインバウンド・アウトバウンドビジネス
           〜SARS禍を経験して〜」

■講 師:大阪明浄大学観光学部 教授 鈴木 勝 氏

■会  費:当協会会員 無 料、一 般(スピーチのみ)1,000円                                                  

参 加 申 込 書 

ファックス(06-4395-1113)または封書で以下に記入のうえ、ご送付下さい。

第204回 例会 (11/28  PM545620   食事    参加  不参加

               PM6:30〜8:00   お話    参加  不参加 

 (レジュメ)

2003年11月28日

    第204回(11月例会)  
      <
大阪府日中経済交流協会> 

中国のインバウンド・アウトバウンドビジネス
〜SARS禍を経験して〜

大阪明浄大学観光学部教授  鈴木勝
        m-suzuki@meijo.ac.jp http://www2.meijo.ac.jp/mei-suzu

[T]中国の「インバウンド観光」(受入国として)

@世界 → 中国  
☆「世界第5位」の“観光大国” 1,122万人(2001年)(1990年は12位)<参考>日本34位(475万人)世界全体6.96億人(2000年)
A日本 → 中国
☆2001年:日本人渡航先として韓国(237.7万人)を抜き、NO.1に(238.4万人)
☆2002年:298.6万人(前年比 
25.2%増  前年に続き1位)
Bインバウンド観光拡大の要因
☆政治的・経済的・社会的・・・安定性
☆観光産業のインフラ整備・・・旅の“安心感”&“快適感”
・「ハード」国際水準ホテル(外資系)・国際&国内航空増加・交通網充実
・「ソフト」ホスピタリティ向上・安全性
☆観光資源の活発な開発と整備(例:世界遺産・・・29箇所 2003年7月現在)
☆活発で継続的な観光プロモーション(国家・地域)
☆「中国旅行」における選択肢の多様化(宿泊・食事・観光)
☆各種渡航規制緩和(ビザ:トランジット・修学旅行生・無査証2003年9月)

[U]中国の「アウトバウンド観光」(送出国として)
@中国 → 世界
 1,660万人(2002年:前年比36.8%増)(香港マカオ含 む)
☆ADS対象国(観光目的指定国) 28カ国・地域(2003年10月現在)
[シンガポール・マレーシア・タイ・フィリピン・オーストラリア・ニュージーランド・韓国・日本・ベトナム・カンボジア・ミャンマー・ネパール・インドネシア・ブルネイ・エジプト・トルコ・マルタ・ドイツ・スリランカ・モルジブ・インド・南アフリカ・クロアチア・ハンガリー・パキスタン・キューバ・香港・マカオ    
注:EUにおけるシェンゲン条約の存在]
A中国 → 日本  45万人 (2002年 前年比15.6%増)   
Bアウトバウンド観光拡大の要因(「観光客輸出国」)
☆1997年「中国公民自費出国旅游管理暫定弁法」制定:観光目的旅行の許可
改革・開放政策の進展による中国人の経済的ゆとり
☆労働時間の大幅な短縮(土・日曜の週休2日制、年3回の7連休制度)

[V]中国観光産業
@旅行会社:
WTO加盟後における外国の旅行会社の進出
合弁設立事例:2000年4月「新紀元国際旅行社有限公司」(日中初)。その他:中国との合弁旅行社は11社(米・仏・スイス・シンガポール・香港etc.)
Aホテル:他の観光産業に先んじて開放。国内に多くの合弁ホテル建設
B航空会社:中国民航の「分社化→グループ再編成」や外国とのアライアンス

[W]SARSに直面した中国観光
@インバウンド観光  
☆観光産業全般への大なる影響(ホテル・旅行会社・航空会社・レストランetc.)
「一般観光性ツアー・ビジネス旅行・国際会議・見本市・修学旅行etc.
☆中国の安全性・衛生観念に対する信頼の失墜・・・ハード面(ホテル作り・ 道路作りなど)ブルドーザー的観光開発への警鐘
<影響比較>「SARS」vs.「アメリカ同時多発テロ・イラク戦争」
Aアウトバウンド観光 
☆外国旅行の全面的中止と海外受入地の反応「世界観光地に及ぼした影響」

[X]SARS後の中国観光の状況と今後
@インバウンド観光
<復活への
戦略>
☆訪中キャンペーン開始 
☆無査証
訪中2003年9月開始(
観光、商用、親族訪問の渡航15日間以内
☆復活状況:二極化される復活状況(国別・目的別・中国地域別etc.)

☆独資法人設立(日航国際旅行社)・その他ドイツTUIグループ

<今後の課題「観光資源大国」⇒「観光大国」・・・2020年予測:世界1位
☆中国側の観光&観光産業の重要性の認識
衛生習慣の見直しと環境改善:レストラン・ホテル(沿岸部&内陸部)

☆「観光地開発」:「内陸&国境地域への拡大」・「自然環境保護を配慮した開発」・
        「地域色を有した観光開発」
☆「ツアー商品」:特色を有した商品・品質向上
☆中国国内:航空・ホテル・道路・鉄道(新幹線etc.)各種ネットワーク拡充
☆効果的な観光宣伝:共同手法(例:近隣諸国「日中韓」・「北東アジア圏」)
☆人材育成
☆「2008年北京オリンピック」&「2010年上海万博」を契機とした観光振興
☆上海:ユニバーサルスタジオ(2006年)/香港:ディズニーランド(2005年)
2020年の「観光大国」予想:観光資源(自然・歴史・文化)だけでは達成困難
・・・「SARS」“雨降って地固まる”

Aアウトバウンド観光 
☆海外旅行&国内旅行の活発化(SARS時のフラストレーション)
☆「SARSの危惧」vs.「世界各国による観光誘致宣伝」
ADS国拡大&渡航緩和(香港&マカオへの個人旅行許可・・・従来は団体のみ)
☆日本観光査証の発給地域拡大の動き
(北京・上海・広東省+4省1市:江蘇省・浙江省・山東省・遼寧省・天津市)  
B観光産業
☆外資旅行会社の営業拡大(中国人の国内旅行&外国旅行)
☆観光各企業(旅行会社・ホテル・航空会社etc.)の競争力向上と外国進出
☆中国企業と外国企業との提携(事例:
JR西日本と上海・錦江グループ)
☆アジアのハブ(拠点)空港としての役割(北京・上海) 
☆人材育成
                               (了)


(表1)   「中国への旅行者数/日本人及び世界全体」

事項   年

日本人
(人)

前年比増
(%)

世界全体
(人)

前年比増
(%)

1989
1990
1991
1992
1993
  1994
  1995
  1996
  1997
  1998
  1999
2000
2001
2002

358,828
463,265
640,859 
791,531
 912,033 1,141,225 1,305,190 1,548,843
1,581,747
1,572,054
1,855,197
2,201,513
2,384,500
2,986,800

     -
29.1
38.3
23.5  15.2  25.1  14.4  18.7
 2.1
▲0.6
18.0
18.7
 8.3
25.2

1,460,970
1,747,315
2,710,103 
4,006,427 4,655,857   5,182,060   5,886,716   6,744,334  7,428,006  7,107,747
8,432,300
10,160,040
11,226,300

     -
19.6
55.1
47.8 16.2   11.3  13.6  14.6  10.1
4.3
18.6
20.5
10.5
 ―

(資料)中国国家旅游局    (注)「世界全体」には、華僑および香港・マカオ・台湾同胞は含まず。 


(表2)
「中国人/外国旅行者数(香港・マカオへの旅行者数を含む)

事項/年

 日本(人)

前年比増(%)

  世界全体(人)

前年比増(%)

1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002

193,486
220,715
241,525
260,627
267,180
294,937
351,788
391,384
452,420

▲5.6
14.1
9.4
7.9
2.5
10.4
19.3
11.3
15.6

3,733,600* 4,520,500*7,588,200 8,175,400 8,425,600
9,232,400
10,472,600
12,130,000    16,600,000

▲0.2
21.1 6.3 7.7
3.1 9.6
13.5
15.8
36.8

資料:中国国家旅游局(世界全体)、*印:香港・マカオを含まず
国際観光振興会(訪日中国人)

 

(表3)中国人入国者数「観光目的指定国」(単位:人)(2002年3月現在)

国・地域

自由化年

1994

1995

1996

1997

1998

1999

伸率94―99 %

1)香港

1983

1,943,678

2,243,245

2,311,184

2,297,128

2,597,442

3、206、452

65.0

2)マカオ

1984

423,415

547,527

539,919

569,372

622,214

816,825

92.9

3)タイ

1991

257,455

375,564

456,912

439,795

571,061

775,626

201.3

4)シンガポール

1991

164,886

201,953

226,677

235,112

293,282

372,881

226.1

5)マレーシア

1991

95,789

103,130

135,743

158,679

159,852

190,851

99.2

6)フィリピン

1992

9,259

8,606

15,757

19,093

24,252

21,220

129.2

7)韓国

1998

140,985

178,359

19,960

214,244

210,662

316,639

124.6

8)オーストラリア

1999

29,700

42,600

54,000

65,836

76,543

97,990

230.0

9)ニュージーランド

1999

6,487

8,918

13,646

17,551

  16,410

 23,241

258.2

10)日本

2000

193,486

220,715

241,525

260,627

267,180

294,937

52.4

11)ラオス

2000

886

1,242

1,739

6,694

7,251

20,269

128.8

12)ベトナム

2000

14,381

62,640

377,555

405,279

420,743

484,102

236.6

13)ミャンマー

2000

12,148)

14)ブルネイ

2000

15)カンボジア

2000

20,782

22,886

22,029

17,282

18,035

26,805

29.0

16)ネパール

2000

3,434)

4,587)

4,846)

5,673)

5,340)

17)インドネシア

2001

37,096

38,895

21,739

24,984

34,327

18,732

49.5

18)ドイツ

2001

102,723

117,069

132,950

142,671

161,939

178,107

73.4

19)マルタ

2001

489)

522)

699)

20)エジプト

2001

4,292

5,930

7,001

6,932

8,272

11,189

160.7

参考

合計

3,445,300

4,179,279

4,578,336

4,881,279

5,489,465

6,855,866

(前年比)

―%

21.3%

9.5%

6.6%

12.5%

24.9%

注1)アジア太平洋観光交流センター『世界観光統計資料集』データをもとに作成。「−」部分は未発表。
注2)
「香港・マカオ」は1997年、1999年に各々中国へ帰属したが、1国2制を採用し外国旅行統計上、中国本土と別扱いとしている。
注3)
自由化年:香港、マカオ、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンはそれぞれ「親族訪問」国・地域として承認を受け、次に1997年中国公民自費出国旅行管理暫定規則により「観光旅行」も可能となる。
注4)
「合計」: ( )内数値は合算せず。