鈴木 勝 研究室
ホーム 私の教育分野 私の研究分野 プロフィール 趣味・関心 リンク一般 SUZUKI Laboratory

 

         <ひょうご講座> (レジュメ添付/一番↓)

   [大国中国の現状と将来を読み解く
      (連続講座10講)]

(ひょうご大学連携事業推進機構・関西日中関係学会・
          神戸社会人大学 共催)


講義概要
【第1講 05/14】 大国中国の現状と将来をどう読み解くか
京都大学名誉教授・関西日中関係学会名誉会長 竹内  実

10回の連続講座、その第一回なので、あまりこまかいところにたちいらず、基本的な観点をみなさまに提示できればと、かんがえています。
 本稿をしたためているきのう、上海ではデモ隊が日本総領事館に投石するなど、こちらで眺めていると、ずいぶん危険な状況のようにもみえます。
 しかし、はたしてそうなのか。
 じっくり考え、読み解きたい。(05年4月17日)
 


【第2講 05/21】 上海に見る中国の現状と将来の問題
大阪府日中経済交流協会副会長・関西日中関係学会会長 原田  修

・ 84年、日中製造合弁第1号企業を立ち上げて〜そして、いま
・ 上海スズメがみる、歴代の上海市長―汪道涵、江沢民、朱鎔基
・ 93年2月、南浦大橋のケ小平〜「南巡講話」の進軍ラッパ
・ 中国の工会は、労働組合か???
・ SARSで消えた?上海の疑獄―周正樹事件
・ 2010上海万博、そして沖積層に建つ世界一の高層ビル
・ 内なる「一国両制」〜「二等公民」のケジメは・・・


【第3講 05/28】 税制に見る中国の変化
キャスト国際共同会計事務所代表公認会計士 三戸 俊英

 

1 対外開放政策の開始 1978年12月 中国共産党11回大会三中全会
2 外資進出に伴う税制の整備
3 「利改税」の開始(国営企業に対し利潤上納を税金納付に改める)1984年9月18日
4 外資投資企業間の所得税法の統一(1991年7月1日)
5 1994年税制改革
6 税務通知の公開
7 規制緩和−許認可の削減と下位への権限委譲
8 2007年度から外資投資企業と内国資本企業の税制を統一
9 社会主義法制と市場経済法制の矛盾


【第4講 06/04】 中国東北地域に見る北東アジアの現状と将来
桜美林大学院教授 川西 重忠

 

1. 6月4日に思う  16年前天安門事件(1989年6月4日)の現場に立ち会う
2. 今年5月4日の天安門広場の光景  反日デモの封じ込めに思う 
3. 中国人民の何が反日の理由なのか  学生のアンケートから考える
4. 歴史認識と領土問題を敢えて考える  中国人と日本人の驚くほどのずれの大きさ
5. 大国中国の現状  格差の現状   日本の10倍の格差をどう小康状態に持ってゆくのか
6. 中国西部大開発と東北振興政策の方針と背景
7. EUの地域統合とアジアの地域統合  その異質性と共通性
8. 北東アジアにおける共同体意識   共同体の捉え方  地域上、認識上、
9. 共通基盤としての儒学  孔子学院の設立構想
10. 多国籍企業に見る市場統合と共通通貨体制の構築・促進がやはり必要だ
11. 終りに   日中韓における産官学一体教育構想が各地域で進みつつある


【第5講 06/11】 オリンピックに向かって疾走する中国をどう読むか
羽衣国際大学産業社会学部長・教授 三村正治

 

 中国経済はまさに止まるところを知らぬ勢いで伸び続けている。
疾走するという表現がぴったりである。
その先には「北京オリンピック」があり、「上海万博」が控えている。
しかし目標があるあいだは走り続けることは出来るかも知れないが、その先はどうなのか。いやそれまでに息切れはないのだろうか。
日本・中国はそのお互いの依存度の高さゆえにお互いがお互いを無視できない関係になっている。その割には、お互いを本当に理解しているとは言い難い。
中国の経済発展の歴史を振り返りながら、オリンピックに向かって走り続ける中国の真の姿を理解できるよう、実例を挙げながらお話したい。

【第6講 06/18】 中国現代文学に現れた内省意識の消長
仏教大学文学部教授 吉田 富夫

 

 20世紀の中国現代文学の開拓者は魯迅で、その処女作『狂人日記』は強烈な近代人的内省意識に貫かれていた。毛沢東時代=<文革>終息後のいわゆる新時期文学"はその魯迅の伝統の復権を標榜したが、はたしてそれがどこまで果たされたかを、巴金、鄭義、王蒙の三人の作品を通して考える。

【第7講 06/25】 日中言論マスメディアに見る日中間のギャップの現状と課題
在日中国人作家 毛 丹青

 

2005年の4月、突然ふって沸いたような中国における「反日」報道。そのデモ隊の投石画面がTVで茶の間に入り込み、日本人市民に恐怖感を植えつけたように思います。しかし、なぜか今回も「現場との違和感」を感じました。そこにはマスコミの限界が感じられますが、日本人と中国人お互いの誤解と偏見を解くためには、粘り強く、細かい文化交流が必要です。


【第8講 07/02】 中国観光立国政策の現状と将来を読み解く
明浄大学観光学部・教授  鈴木  勝

T 中国における「国際観光」の両面の現状と将来を考究する。両面とは、?「外国人の中国旅行」(インバウンド)、A「中国人の海外旅行」(アウトバウンド)である。世界観光機関(WTO)の予測によれば、2020年には中国は「受入国」として、世界のNO.1に。他方、「送出国」として、NO.4になる。「2008年北京オリンピック」&「2010年上海万博」を当面の目標にして、中国は"21世紀国際観光の牽引車"的役割を果たしつつある。
U これほど躍進してきた要因は、?政治的・経済的・社会的な安定、A観光産業のハード&ソフト面でのインフラ整備による旅の"安心感"&"快適感"、B活発で継続的な観光プロモーション(国家・地域)である。
V しかしながら、観光振興・政策上、中国政府が抱える課題も多い。
@SARS(新型肺炎)etc.の再発防止、A自然環境保護に配慮した観光開発、B近隣諸国との友好な人的交流と共同振興政策、C観光産業の人材育成   



【第9講 07/09】
  大上海の下層労働者:高度成長を支える農民で稼ぎ労働者の哀史
桃山学院大学経済学部教授 厳 善平

近年の中国では、戸籍登記地から離れて他地域で暮らしている、いわゆる流動人口は1億5千万人に上り、その8割以上が農業戸籍を持つ農民である。総人口の1割以上が自由に移動していることから、中国の社会は相当流動化しているといえよう。
 しかし他方では、沿海地域または大都市部に入っている農民たちは様々な制度差別を受けている。個々人の能力や努力の如何にかかわらず、農民出稼ぎ労働者(民工)は全体として都市民の敬遠する仕事にしか従事させてもらえない。医療、年金などの社会保障制度が民工には適用されず、彼らの子女の教育を受ける権利も保障されない。都市の中に民工と都市民の分断構造が存在するのである。中国経済の高度成長、大都市の繁栄、都市民の豊かさはある意味でこの分断構造があってはじめて可能であった。
 この講義では、流動化と分断化の実態を上海市での調査を踏まえながら説明し、高度成長を支えてきた民工の哀史について就業、賃金、生活などから述べたい。

【第10講 07/16】 躍進する中国企業に日本企業はどのように向き合うのか
兵庫県立大学経営学部教授 安室 憲一

中国企業・人材は世界でもトップクラスの学習能力を持っています。利潤や所得獲得への動機付けも極めて旺盛です。技術を適切に移転すれば、日本で生産されている商品の80%は中国でも製造が可能でしょう。中国企業は、技術やスキルの面でだけでなく、資本力でも2010年までに日本企業に肉薄するでしょう。この世界一タフで賢い中国企業とどう付き合うか、この問題を抜きに日本企業の経営戦略は語れません。しかし、中国企業は成長を急ぐ余り、様々な欠点や「歪み」を持っています。他方、日本企業は「失われた10年」を通じて筋肉質の強靭な体質に生まれ変わりました。中国にも高所得者が出現し、日本製品を愛好する人々がたくさんいます。これからは、中国市場で中国企業との大競争が始まります。ここでは、中国で健闘している日本企業を紹介し、「勝ち組」企業の中国戦略を解説します。

             <レジュメ>

2005年07月02日

大学連携「ひょうご講座」[大国中国の現状と将来を読み解く
   「中国観光立国政策の

          現状と将来を読み解く」

大阪明浄大学観光学部教授  鈴木勝
m-suzuki@meijo.ac.jp http://www2.meijo.ac.jp/mei-suzu

[T]中国の「インバウンド観光」(受入国として)<現況>
1.世界 → 中国 
☆「世界第5位」の“観光大国“1,300万人 2002年)
(1990年12位)(参考)日本33位(520万人)世界全体7.02億人(2002年)

2.日本 → 中国
☆2001年:日本人渡航先として韓国(237.7万人)を抜きNO.1に(238.4万人)
☆2002年:292.5万人(第一位)  <デスティネーション比較>

3.
インバウンド観光拡大の要因(その1)「ソフト・制度面」
(1)安定性(政治的・経済的・社会的)
(2)ソフト面での改良
  1)CS・ホスピタリティ向上について
    @「CS・観光ガイド」A「治安」B「事故・トラブル」
  2)中国旅行における選択肢の多様化
(宿泊・食事・観光)
  
3)活発で継続的な観光促進・情報発信<観光資源大国→観光大国>
   <中国○○年:事例>
1999年「エコツーリズム年」、2000年「神州世紀の旅」、
      2001
年「中国スポ−ツ健康の旅」、2002年「中国民間芸術の旅」、2003
    「中華料理王国の旅」、
2004年「中国庶民と生活の旅」、2005年「中国観光年」

「観光業は中国の第3次産業の中で活力と潜在力のある新興産業であり、国民経済の新たな成長点」とし、「内需拡大、外貨獲得、産業構造調整、貧困対策などの面で大きな役割を果たす」(2003年昆明で開催された「03年中国国際観光交易会」呉儀副首相)

(3)渡航規制緩和政策の実施
  1)入国査証(
トランジット・無査証2003年)
  
2)外国人開放都市:2002年1,455箇所(除:軍事的社会治安上の都市)

(4)「観光資源大国」の活発な開発と整備
   1)世界遺産とシルクロ−ド   
   2)観光資源開発と保護

4.インバウンド観光拡大の要因(その2)「観光産業のインフラ整備」

(1)空のネットワ−ク(路線拡大とシステムの向上)

(2)ホテル・レストランの拡充

@外資系ホテル開業 A民族系ホテル B中国のホテルの将来計画

(3)旅行会社と旅行産業   @現況 A外資旅行社の開放状況

(4)自動車・鉄道など陸上交通ネットワ−ク

(5)外国人訪問者のためのショッピング店舗

4.予期せぬ観光停滞  
2003年「SARS」    2005年「反日デモ」

5.近い将来のインバウンド観光

☆「2008年北京オリンピック」&「2010年上海万博」を契機とした観光振興
☆観光資源の活発な開発と整備(内陸部&国境地域)
☆中国国内:航空・ホテル・道路・鉄道(新幹線etc.)各種ネットワーク拡充

[U]中国の「アウトバウンド観光」(送出国として)<現況>

1.中国 → 世界
 
1,660万人(含む:香港・マカオ)2002年

2.中国 → 日本  45万人 (2002年 前年比15.6%増)
   
3.アウトバウンド観光拡大の要因

☆1997年「中国公民自費出国旅游管理暫定弁法」制定:観光目的旅行の許可
改革・開放政策の進展による中国人の経済的ゆとり
☆労働時間の大幅な短縮(土・日曜の週休2日制、年3回の7連休制度)

ADS(観光目的指定)国拡大(28カ国)と政府による渡航緩和(含・自由旅行)

[V]中国観光産業<現況>

@旅行会社:
WTO加盟後における外国の旅行会社の進出
外資・合弁(旅行会社)設立:<対象>「外国人旅行」「中国人(国内・海外)」
Aホテル:他の観光産業に先んじて開放。国内に多くの合弁ホテル建設。
B航空会社:中国民航の分社化→グループ再編成/外国航空会社との業務提携

[W]中国の国際観光(2020年予測)
21世紀国際観光の牽引的役割・・・世界観光機関(WTO)による予測

<観光予測>「受入国」(上位5位)@中国  AフランスBアメリカCスペインD香港
       「送出国」(上位5位)@ドイツA日本    BアメリカC中国   Dイギリス

[X]中国・観光大国の課題「さらなる観光大国・中国の課題」

(1)観光地開発・・・@西部大開発A観光開発-大都市の場合B胡同(北京)

(2)安全管理  
 (3)商品開発と品質向上    
 (4)人材育成

[Y]日中両国の観光交流の将来と課題

1.これからの日本人の中国観光と課題―日本人訪中旅行500万人時代?

2.これからの中国人の訪日観光誘致と課題

(1)観光立国・日本の表明と“日中いびつ”交流(例:2004年)の解消

訪中日本人旅行者:訪日中国人旅行者= 333万人:62万人  =5.4:1

日本人海外旅行者:訪日外国人旅行者=1,683万人:614万人 =2.7:1

(2)渡航制限緩和の推進  

(3)中国人旅行客誘致マーケティング戦略

(4)観光交流の重要性とホスピタリティ            

(5)中国人マーケットへの過度のシフトの危惧          以上

図表1   「中国への旅行者数/日本人及び世界全体」

事項   年

日本人
(人)

前年比増
(%)

世界全体
(人)

前年比増
(%)

1989
1990
1991
1992
1993
  1994
  1995
  1996
  1997
  1998
  1999
2000
2001
2002

358,828
463,265
640,859 
791,531
 912,033 1,141,225 1,305,190 1,548,843
1,581,747
1,572,054
1,855,197
2,201,513
2,384,500
2,986,800

     -
29.1
38.3
 23.5  15.2  25.1  14.4 
18.7
 2.1
▲0.6
18.0
18.7
 8.3
25.2

1,460,970
1,747,315
2,710,103 
4,006,427 4,655,857   5,182,060   5,886,716   6,744,334  7,428,006  7,107,747
8,432,300
10,160,040
11,226,300
13,436,000

     -
19.6
55.1
47.8 16.2   11.3  13.6  14.6  10.1
4.3
18.6
20.5
10.5
19.7

(資料)中国国家旅游局    (注)「世界全体」には、華僑および香港・マカオ・台湾同胞は含まず。 


     図表2   「訪中日本人数推移」   (国松博氏作成)

 

 

 


 

 

 

 

 

図表3 「外国人訪中者数主要10カ国比較表」(国松博氏作成)

 

 

 

 

 

 

 

図表4  「中国人/外国旅行者数(香港・マカオへの旅行者数を含む)

事項/年

 日本(人)

前年比増(%)

  世界全体(人)

前年比増(%)

1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002

193,486
220,715
241,525
260,627
267,180
294,937
351,788
391,384
452,420

▲5.6
14.1
9.4
7.9
2.5
10.4
19.3
11.3
15.6

3,733,600* 4,520,500*7,588,200 8,175,400 8,425,600
9,232,400
10,472,600
 12,130,000    16,600,000

▲0.2
21.1 6.3
7.7
3.1
9.6
13.5
15.8
36.8

資料:中国国家旅游局(世界全体)、JNTO      *印:香港・マカオを含まず 

 

図表5   中国人の外国旅行先トップ102002年)   

  項目
順位

渡航先

渡航者数
(人)

1位

香港

4,757,300

2位

マカオ

1,451,250

3位

タイ

763,139

4位

ロシア

725,825

5位

ベトナム

724,385

6位

シンガポール

670,098

7位

マレーシア

557,647

8位

韓国

539,466

9位

日本

452,420

10位

アメリカ

225,565

      資料)財)APTEC