投稿論文 <優秀賞>
私の「関西国際空港と関西の活性化」案
[序]
[T] 「関西国際空港と関西」を取り巻く現在の環境
@)東京一極集中化と関西空洞化現象
A)成田空港・羽田空港への航空輸送力シフト
[U]
「関西国際空港と関西」の課題とこれから目指すべき道
@) “観光中枢拠点・関西”
A) 日本の“ゲートウエイ・関西空港”
B) 「観光産業」と「モノヅクリ産業」との調和
[V]
「関西国際空港と関西」活性化への具体的戦略
@)「グレーター関西ツーリズム州」(Greater Kansai Tourism State)の構築
@「グレーター関西ツーリズム州」と政府
A「グレーター関西ツーリズム州」の具体的戦略
<宣伝・プロモーション>
・ 観光アピールとプロモーション活動
・
マーケティング分析に基づいた情報発信
・
近隣諸国との共同観光プロモーション
<渡航緩和政策>
・
外国人渡航緩和政策(VISA緩和免除・トランジットVISA・地域/期間限定VISA免除)
<企業/起業支援政策>
・ インバウンド企業・起業支援政策
・ 海外企業・外国人による訪日旅行ビジネス参画への促進
<異色の観光商品開発・振興戦略>
・ 国際会議、産業観光、トランジット、青少年修学旅行
A)「日本のゲートウエイ・関西空港」としての具体的戦略
@
関西空港利用増加政策(直行便誘致・日本国内経由便増加)
A
訪日外国人・日本人国内旅行客増加政策
・
関西空港トランジット客
B)人材育成と登用
@インバウンド担当スタッフ・外国人マネジャー・女性ホスピタリティ担当者の増強
Aガイド・インタプリター・通訳・レンジャーの養成
B「大学・専門機関のインバウンド教育」と「グレーター関西ツーリズム州立観光大学」設立
[W] 終わりに
[X] 参照
私の「関西国際空港と関西の活性化」案
<要約 800文字>
21世紀に入りさらに「大交流時代」が進み、世界の旅行や航空輸送は拡大化の様相である。わが国の観光もこれに呼応し拡大基調にあるが、極端な“いびつ”形態にある。
すなわち「日本人海外旅行者(アウトバウンド)1,600万人vs.訪日外国人(インバウンド)500万人(3:1ないしは4:1の比率)」である。この不均衡是正が国際交流面から、また日本の経済活性化面からも、近年、急速にクローズアップされている。
本論は関西空港と関西の活性化を論ずるが、これらの活性化なくしては日本の“観光いびつ”の是正と、日本経済の活性化がないとの立場にある。
さて、日本経済や観光動向を見ても、東京圏一極集中化がさらに強まっている。この時期に関西空港と関西の活性化への手法、同時に、均衡ある観光大国・日本を追う手法を提言したい。
第1に、関西空港の活性化なくしては日本観光全体、特にインバウンド観光の振興はない。成田・羽田空港による東京圏一極集中化は当面は持ちこたえるが、年間1,000万人以上の外国人を着実に訪日させるには難しく複数の拠点化が不可欠。
したがって、関西空港は名実ともに日本のゲートウエイにならなければならない。そのため「国際拠点」であるとともに「国内拠点」空港を目指すべきである。
第2に、関西・関西空港の活性化に向けて「グレーター関西ツーリズム州」構想を提言したい。州観光大臣、州観光局を設置し種々の観光振興策を行なう。「宣伝販促」「外国人渡航緩和策」「インバウンド企業/起業支援策」「海外企業・外国人による訪日旅行ビジネス誘致策」「関西空港利用増加策」「人材育成・登用(「外国人マネジャー・女性ホスピタリティ担当」「ガイド・通訳・レンジャー」「州立観光大学設立」などである。観光振興手法は1つや2つで十分という決定打はなく、種々の仕掛けの積み重ねであると考える。(了)
<本文> (400文字 X 40枚)
私の「関西国際空港と関西の活性化」案
[序]
世界は「大交流時代」に向けて進みつつある。その中で、「21世紀における国際社会の基幹産業は観光産業」といわれている。すでに世界で飛躍的な進展を続けている観光産業は、世界全体の総生産の11.4%を占め、同時に2億人の雇用がある世界最大の産業になっている。
21世紀における観光客数の増加は、一時的には例えばアジア通貨危機の影響などにより低迷をきたしたこともあるが、21世紀を迎え旅行や航空輸送は確実に復活し観光関連消費額は巨大化の方向にある。世界観光機関の予測によれば、とりわけ、アジア地域での観光の伸びは著しく、2000―2010にかけて年平均増加は7.7%と試算され、世界全地域で最大の伸びを示すとしている。
アジアの伸びを支える主因の1つとして、ハブ空港を目指し近年、各国で次々と建設・整備される巨大空港である。シンガポール・チャンギ空港に続き、1998年には香港・チェック・ラプ・コックやクアラルンプールのセパン空港がオープンし、2000年には韓国・仁川空港が完成した。また、中国の玄関口として上海浦東空港が2002年に出来上がった。これら各国の巨大空港はアジア・ビッグバンといわれる2010年代にはフル稼動するに違いない。
世界はこのような状況にあるが、わが国の観光事情に関して日本人海外旅行者は順調に伸び1,700万人に達するほどであるが、インバウンドの訪日外国人は2002年にやっと500万人に達する状態であり、3:1ないしは4:1の比率となり、“いびつ”な観光国となっている。日本全体から関西圏に目を転ずるならば、この地域における最近の地盤沈下は急激に進みつつある。
関西圏のキー的存在の関西空港からの国内・海外の航空便の撤退・減少が象徴的である。関西活性化にとって関西空港が元気さを取り戻すことが不可欠であり、関西空港の活性化なくしてはわが国の観光大国化の道は開けてこない。政府は2003年を「訪日ツーリズム元年」と位置づけ観光立国の道を歩みだした。世界の観光立国の多くの事例から、国民全体の熱意を背景とした官民での協調が絶対不可欠とされる分野が観光産業である。まさしく「観光は国の光を見る」の言葉通り、日本国の総合力が問われている。
本論の「グレーター関西ツーリズム州」構想は、単にこの地域の力だけでは観光大国への道は不可能であり、この州が強力なリーダーとなり日本全体を牽引することを意図する。本提言は関西の活性化に向けて多岐に及ぶが総合力の充実を求めるものであり、その実施手法として実現可能な分野から実施することが成功への道であると考えている。
ところで、わが国の観光振興に関しては、これまで多くの議論があり提言がなされてきたが、観光の重要性は認識されつつも“アクション・プログラム”になると先が進めない状況にある。具体的な実践法の検討が現段階ではもっとも必要とされている。このような認識にたちつつ、「関西国際空港と関西の活性化」の提言を試みたものが本小論である。
[T] 「関西国際空港と関西」を取り巻く現在の環境
@)東京一極集中化と関西空洞化現象
「関西においては、企業の中枢機能が東京シフトする一方、生産拠点の中国等への移転が加速するなど、いわゆる『二重の空洞化』が進行している」(関西経済連合会「平成14年度事業計画」p.1)。グローバル競争の中にあって、日本経済は厳しい状況が続いているが、とりわけ関西圏は企業による中枢機能が東京にシフトし、それにつれ人材のシフトも同時に生じている。
「東京一極集中化」は大問題であるが、それ以上に重大だと考えられるのは生産拠点の「中国等へのシフト」ではないだろうか。なぜならば、前者は日本国内の問題であるが、後者は日本国外での問題となるからである。観光産業で言えば、さしずめ「日本人海外旅行者の成田・羽田集中化」と「外国人旅行者のジャパン・パッシング」であろう。
例え成田・羽田集中化であっても日本全体が伸びている状況にあれば、現時点では決定的なダメージには結びつかないが、後者のジャパン・パッシングの現実は即座に対応策を講じなければならない問題であるからである。現に太平洋上の航空路線のアジア・アメリカ間の例で言えば、日本寄港旅客はわずかであり、アジアで急増する旅行者や米大陸からアジアに向かう旅客を日本では吸収できていない。このことは、訪日外国人500万人のマーケット分析をすればすぐ理解できることである。日本および関西が世界の観光デスティネーション上で忘れられた存在となっている。
A)成田空港・羽田空港への航空輸送力シフト
関西空港および新東京国際空港の営業概況が発表された。関西空港の2002年上半期の運営状況報告によれば、「国際線の旅客数が538万849人、国内線が34万768人となり、ともに前年同期の実績を16%も下回っている。
これは、日系航空会社を中心とした『路線の撤退』や『供給量の縮小』などが影響し、国際線旅客便の発着回数も前年同期を14%下回る2万5561回であった」。一方、新東京国際空港によると「同時期における成田空港の国際線利用の日本人旅客数(速報値)は、前年同期比5%増の942万492人となった。国際観光振興会調査による同時期の日本人出国者数(5.2%減・845万3572人〔速報値〕)と約10ポイントの乖離が生じており、今年4月の暫定平行滑走路供用開始後に強まった“東京集中化”傾向を如実に表している」。
2002年4月の「成田空港第二暫定滑走路」および「羽田空港の国際チャーター便解禁」がさらに加速させたことになる。
東京圏集中化の進展で、かつて関西空港に就航していたが現在撤退した外国航空会社の1つは、成田空港に就航できるなら日本就航を考慮したいとまで言わしめるほどであり、また、関西空港は「24時間体制」のイメージとは程遠く、ブームで湧くアジアの拠点空港のトランジット・スペースの賑わいと異なり、夜間はゴーストタウン的空港となりつつある。航空便の撤退、空港ビルディング内テナントの営業停止、旅客減少による営業時間短縮の店舗も少なくない。以上は関西空港の旅客状況であるがこれ以外に航空貨物がある。旅客の落ち込みと同様に10〜15%程度の落ち込みがある。これは同時に関西圏における各種産業の沈滞化を物語るものである。
[U]
「関西空港と関西」の課題とこれから目指すべき道
@)“観光中枢拠点・関西”・・・「東京一極集中では日本は観光大国にはなれない」
2000年に「新ウエルカムプラン21」が発表された。これは2007年に800万人に達成させる計画である。加えて、2003年初頭に小泉首相から「テン・ミリオン計画」が言い出され、2010年に1,000万人の訪日外国人をとのアイデアである。いずれの計画であってもこの数値を毎年継続させるには、東京一極集中化ではどうしても達成不可能である。
東京に比肩しうる複数の拠点造成が日本の観光大国には欠かすことができず、そのため「関西観光拠点化」は不可欠である。なぜなら、一極集中化には弊害やデメリットが多く伴うからである。
第1に、季節波動の激しい観光形態に対応できないこと。観光立国・日本として、アウトバウンドと同様の訪日外国人を迎えるには近い将来伸び悩むパターンとなる。日本人の海外旅行形態もそうであるが、外国人も時期を選んで訪日する。一例を挙げれば、近年増加の中国人の訪日である。旧正月、メーデー、国慶節などの長期休暇には中国本土、香港、台湾から集中的に飛来する。この事例だけでも中長期的展望は絶望的である。問題は単に航空産業だけではなく、ホテル・旅館の宿泊産業やバス・列車などの輸送機関にも当てはまる。訪日外国人は日本人海外旅行者の時期と重なることが多く、アウトバウンドの健全な進展が望めない。すでにゴールデンウィーク期間はもちろん、旧正月、国慶節の時期には日本人の海外旅行を制限せざるを得ない状況も現出されている。
第2の弊害として、台風、地震、コレラ、テロなどの発生が東京圏に生じた場合を想定するならば、外国人は知名度の低い関西圏その他を旅行するよりも他国へシフトする。この事例としてインドネシアのバリ島がある。1990年代半ばの日本人コレラ禍、2002年のテロ事件があるが、バリ一極集中化の結果、インドネシア全体の観光産業が現在でも大きなダメージを受けている。
第3に、観光産業を継続的に活性化に導く手法は「リピーター」であり、この対策上難点がある。東京一極集中化ではリピーターを確保することは難しく、この観点から関西圏の大阪、京都、奈良、神戸は魅力を多種内在し、東京圏と十分比肩できる。リピーターに喜ばれない国・地域は観光国・地として苦戦する。
一方、一極集中化を食い止めた事例または複数拠点化の成功例を掲げると、前者は韓国であり、後者は中国、タイである。韓国にあっては、長らくソウル一極集中化であったが、「ビヨンド・ソウル」宣伝が功を奏し、プサン、済州島を含めた観光誘致で日本人のみならず多くの中国人を迎え、韓国観光全体を賑わせている。
また、中国における北京と上海。歴史的には北京や西安に劣る上海であるが産業活性化を背景に、ビジネス出張のみならず観光客誘致でも北京を凌ぐ勢いにあり中国の観光総量を大きく伸ばしている。さらに複数観光拠点化のメリットとして競合の相乗作用がある。北京を意識しての競争が観光分野においてもこの地位に押し上げている。
以上、複数観光拠点化を述べたが、関西圏は固有の文化、伝統、自然が豊富であり地域の魅力の再発見を行なうことにより、観光での地域経済の波及効果は大きく地域の活性化は十分生ずる。しかしながら、現行の全国横並びの観光振興策は日本を活性化させることに直結していない。関西として後述の「グレーター関西ツーリズム州」を構築して、観光大国のリーダーとして牽引して行く方法が最良と考える。これにより日本として関西圏として、下記のような観光大国像が実現できると考える。
@「インバウンド&アウトバウンド」の均衡のとれた日本と関西
A地域色豊かな、光り輝く日本と関西
Bホスピタリティあふれた日本と関西
A) 日本の“ゲートウエイ・関西空港”
東京一極集中化の国際空港は問題があり、東京と拮抗できる「日本のゲートウエイ・関西空港」を目指すべきであろう。現在、関西空港の年間利用客は2000年度には総計2,000万人である。国際線1,285万人、国内線772万人である。「関西空港の国内線に占める国際線乗り継ぎ旅客のシェア」は14%と報告されている(関西国空港「関空リポート」)。
「日本のゲートウエイ」としては、乗り継ぎ14%は少なすぎ、関西以西だけでなく、北海道、東北、北陸のゲートウエイとしての役割をさらに持つべきである。国内便の減少を防ぎ増便を図らなければならない。そのため「関西国際空港は国際拠点空港、伊丹空港は国内拠点空港」の政府方針は改善の必要があろう。
ところで、航空会社が就航を難渋する理由の1つに、ビジネス客にとり関西空港がゲートウエイとしての働きをしていないことが指摘されている。原因は企業の本社機能が東京圏に集中しビジネス客が関西に少なく、その上、関西圏のビジネス客が東京から出発している事実である。この解決として、関西経済界への働きがあるがこれ以前に、国際・国内便の増加を図り、利便性・格安化を目指すべきである。
他方、関西空港のゲートウエイ化に対し、身近で大きな脅威があることを認識すべきであろう。2001年に完成した韓国・仁川空港である。関西空港と仁川空港から日本国内空港への数はそれぞれ20箇所以上あり、それらの空港からヨーロッパやハワイなどへは、仁川空港の方が安価性に富み、また利便性からも利があるケースが多い。今後、仁川空港が整備され日本国内都市とのネットワークが増せば、関西空港がさらに危機に立たされる構図になる。
B) 「観光産業」と「モノヅクリ産業」との調和
日本は「ものづくり大国」や「工業大国」のイメージが強いが、この関西圏は従来から「ものづくり」地域として有名である。「観光大国」と「ものづくり大国」との両立は難しいとの考え方があるが、近年の観光振興の深化とともにむしろ相乗効果が強いことが認識されている。直接的には、「産業観光(Technical
Visit)」をツアーに包み込むことであるが、「観光は元気な国・街を見に行き、その元気を貰ってくる」的要素がたぶんに強く、産業が活気づいている国・地域に人的交流は盛んになるものである。
現在、世界でその種の国・街を探すとすれば、中国および上海が筆頭だろう。街に観光的要素が強いかとなると首都の北京や西安の方が見るものは多い。しかし、OLを含めて上海へのブームが続いている。名所旧跡だけでなく街全体の元気さが世界から人を呼ぶ。北京に対抗してビジネス客だけでなく一般観光客でも北京を凌駕する勢いになっている。この現象は「ものづくり大国」の中心地である関西圏に大いに参考になる。
[V]
「関西国際空港と関西」活性化への具体的戦略
@)「グレーター関西ツーリズム州」(Greater
Kansai Tourism State)の構築
@「グレーター関西ツーリズム州」と政府
政府は「グローバル観光戦略の位置付け」として、次のように述べている。
「2007年までに訪日外国人旅行者数を800万人台にするという当面の目標の達成に向けて、政府は関係府省が一丸となって本戦略を推進することとするが、この目標は単に国政府のみが行動して達成しうるものでなく、地方公共団体、関係団体、民間企業なども、認識・目標を共有し、熱意のある関係主体が一体となって行動して初めて成し得るものである。したがって、本戦略は、わが国の様々な主体が連携しながら上記目標を達成する官民あげた国家戦略と位置付ける」(「世界に開かれた観光大国」を目指す!〜グローバル観光戦略の構築について〜P.2)。政府はこれに先立ち「2005年に700万人」(ウエルカムプラン21)に向けて、実施してきた。
さらに2003年初頭に「2010年にテン・ミリオン(1,000万人)」計画が発表されている。これらの3プランを見ると、実行の先送り的存在に考えられなくもないが、見方を替えれば政府の観光振興の真剣さが増していることの証左でもある。政府により観光振興の旗振りが実施されるわけであるが、従来の観光振興手法の“全国横並び主義”が引き続き行なわれる懸念が強い。これまでは日本のイメージ宣伝に終始し、東京圏の露出が際立った以外、全国各地はどんぐりの背比べ状態に終わっている。思うに、訪日外国人500〜1,000万人における海外宣伝の手法は、日本全体のイメージ宣伝とともに重点主義が効果を発揮するし費用が無駄にならない。そのためには強力な拠点作りが必要である。
これを考慮すると東京圏と匹敵する地域として、大阪、京都、神戸、奈良などの諸都市を擁する関西がある。現在までそれぞれ独自の観光開発・振興手法をとってきた傾向が強い。したがって、特色を持つこれらの都市が「観光振興」を中心として強力な結びつきのある拠点になることをここに提言したい。
名称を「グレーター関西ツーリズム州」とする。強いて形態を他国に探せば、オーストラリア連邦・州に似通ったものといえよう。観光政策に関して大枠に関し国家の政策に従いつつ、地域としての特色を前面に出した政策を展開させる。執行責任者を置き観光政策を強力に推進させる形態である。わが国の現憲法下では、オーストラリア国家やアメリカ合衆国のそれぞれの州と同様の権限を付与することは無理であるが、当面の最適な活性化手法として考えたい。観光振興面だけでも州的制度をめざす手法は容易と考えられる。その中にあって、実現可能な課題から解決を図るべきであろう。観光における州制度の骨子としては下記事項がある。
○「グレーター関西ツーリズム州」観光大臣任命 “ミニスター
(Minister)”として行動力あれば官民を問わない。観光振興専任で実施し数値目標を設定し、成績が悪ければ交替する。常に明確な政策を掲げ日本の内外に働きかけ、海外ミッションでは先頭に立ち行動する。
○「グレーター関西ツーリズム州」観光局設置 観光大臣を補佐する指令塔たるポジションである。政府および民間双方から州観光局を編成し、身近な観光政策はもちろん中長期戦略を策定する。目標数字や実績を分析しそれへの到達度を公表し、毎年、テーマを分けて「観光年」などのキャンペーン手法もここから発信させる。大枠としては国家のプランに従いつつテーマを絞った宣伝を行い、振興に順位を付けて実施する。また、観光局の海外拠点を考える。現在、海外政府機関として国際観光振興会が存在するが国家および国民の観光への総意の欠如があるとしても、種々の理由(明確な目標設定、予算不足など)で十分に機能していない。したがって、州としては外国人観光専門家採用、明確な目標設定、単なる案内機能からマーケティングに基づく振興戦略への転換、民間契約制の採用などを実施し、観光拠点化を推進させる。
○「観光振興税制」 手法に関しては後述するが、最も重要と考えられる観光振興
の財源に関しては、完全目的税の導入、地方税収の一定比率を観光振興目的への利用化、その他地方自治体における財源確保を目指す方針をとる。
○「グレーター関西ツーリズム州」地域 大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、三重などの府県が考えられる。観光面で東京圏以上に国の内外の観光客を誘致できる潜
在的可能性がある。
A「グレーター関西ツーリズム州」の具体的戦略
<観光宣伝・プロモーション>
○「観光アピールおよびプロモーション活動」 日本が世界から顧みられない理由は、手法としてアピールやプロモーション活動がいかに少ないかに尽きる。海外PRやプロモーション活動で、効果を挙げている3カ国の手法が、日本にもまた当州にも参考になろう。
まず、タイは1997年にアジア通貨危機に見舞われ経済的には落ち込みを見せたが、観光面ではバーツ通貨の下落を逆手に取り、“アメージング・タイランド(「驚きのタイ」)”の掛け声で、首相を先頭にしてタイ観光促進を行い成功している。次に、韓国であるがタイと同時期にウォンの急落を経験したが、それまでの韓国人による海外観光渡航を制限し、外国人ツーリスト振興に大統領をテレビ宣伝に起用し、官民一体となって振興策を行い現在の隆盛に至っている。3番目にニュージーランド。全世界統一テーマ“100%
PURE NEW ZEALAND”を掲げ、国全体に特別のテーマを設け進んでいる。アメリカ同時多発テロ直後には首相自ら「安全な国・ニュージーランド」を打ち出し成功を収めている。以上簡単に記述したが振興成功の鍵として次の3点がある。
(@)政府のトップによる率先的誘致活動
(A)明確で、重点を置いた観光振興手法
(B)継続した観光振興活動
○「マーケティング分析に基づいた情報発信」 マーケティング分析を国の内外に発信する。これが強力な効果を示すことを日本のインバウンド分野で認識されていない。「統計データ」の告知および分析は観光関係者に多大な効果をもたらす。
例えば、これらの数値を得た旅行会社・航空会社・ホテルの企画担当者は、自社商品・実績との比較をする一方、最新のトレンドを把握し市場環境の変化に即応し戦略の修正を行なう。しかしながら、わが国では重要性が認識されず、政府・国際観光振興会からの数値に関して遅延する場合や分析が不十分であるケースが多い。また、海外の観光専門家へのデータ開示やニュース類の提供(特に、英語による情報)は極端に少ない。
近年,インターネット上のホームページ(HP)が強力な観光振興の武器となっている。一般観光情報以外に、国の内外の観光産業専門家、国家としての観光振興上の意思を伝達する必要がある。HP発信の成功・不成功のポイントは下記の諸項目が挙げられよう。
(@)一般観光情報の多寡(一般情報)
(A)国家首脳・観光(所轄)大臣の主張が明確に頻繁に発表されているか。
(国家主張)
(B)母国語以外に、英語に加えて何カ国語で発信されているか。(言語数)
(C)国の内外の観光産業/学術関係者に対し、データが発信されているか。
(専門家情報)
(D)情報が頻繁に、そして迅速に更改されているか。(更改頻度)
当州としては観光政策、観光大臣のメッセージを強力に押し出す姿勢をとる。言語としては、英語以外に中国語、ハングルを採用する。英語に関しては役立つナマの一般情報に加え、国の内外専門家を意識し最新のデータ分析を公表するものとし、デメリット表示・情報も積極的に開示し信頼を得る方向をとる。
○「近隣諸国との共同観光プロモーション」 近年、官民レベルによる海外諸国との交流が活発化している。特に、アジア地域との連携が目立ち、韓国、中国、アセアンなどとの政治的・経済的な会議が頻繁に開催されている。従来、この種の会議では観光に関する議題はほとんどなされてこなかった。ただし、観光(所轄)大臣会議では当然、観光を議題として討議されてきたが、日本のスタンスは常に旅行者の「送り出し国」としてであり、「受け入れ国」としてのメッセージは皆無に近かった。まず、これらの機会を捉えて、「受け入れ国」としての国の責任ある立場から意思表明の必要性があり、官民こぞって国際的な観光会議の機会をとらえ、メッセージを強く訴えることが重要である。
また、アジア諸国とは相互の人的交流だけではなく、共同観光促進でヨーロッパ、アメリカ、オセアニアからの旅行客をアジアに誘致させる手法がある。例えばヨーロッパからの旅行客に対して、人気の中国だけでなく日本または(および)韓国をも訪問するパターンを宣伝する。日中、日韓、もしくは日中韓3国共同も可能であり、誘致には特別航空運賃、特別コンビネーション宿泊券などの特典提示を考案する。
現在、アセアン10カ国によるツーリズム・パラダイス戦略が展開されているが、アセアン域内特別航空券などの特典が付与され活発に振興が行われている。日本、または州単位でもこの連携は可能であり、また、それらの国の姉妹都市などの活用も考えられる。
<渡航緩和政策>
○「外国人渡航緩和政策(ビザ緩和免除・トランジットビザ・地域/期間/年齢限定ビザ免除)」
現在、日本への入国に際して査証取得、または相互免除でも取得が好ましいとする国々が少なくない。査証免除制度が観光振興に威力を発揮する。観光大国を目指すのであれば今一度、査証緩和に関して徹底的な論議が必要であろう。
各国画一的な緩和を求めるもので決してなく、例えばトランジット・ビザ、地域・期間・年齢限定ビザ免除などが国によって考えられよう。近隣諸国で実効を挙げている国々がある。韓国では1993年の大田EXPOで採用された「ビザ免除措置」で訪韓日本人が急増する成功を納め、1994年「韓国訪問年」の年末まで延長された。日本人への柔軟な対応は中国人観光客にも対象とされ、韓国・済州島への渡航に関して査証免除制を採用している。また、中国では2000年1月から上海への「48時間ビザなしトランジット滞在」をスタートさせている。この事例は中国で初めてのケースである。また、マレーシア政府では日本人の55才以上の熟高年マーケットを対象に、5年間有効の長期滞在ビザを許可している。
これらから考慮されるのは「カンクウ・トランジット・ビザ」、「VISIT KANSAI
キャンペーン」、「高校生・青少年修学旅行」などの渡航緩和策が考慮される。ビザ緩和政策とともに査証取得期間がある。日本へのリピーターを速やかに旅行させる手法として「査証取得日数の短期化」推進も忘れてはならない。
<企業/起業支援策>
○インバウンド企業・起業支援政策 日本における観光産業の中で、旅行会社、航空会社、ホテルなどの活性化でインバウンド分野が大きく伸びる。中でも全国の旅行会社の動きが重要である。しかしながら、極端なアウトバウンド傾斜でありインバウンド取扱量が極めて少なく、この営業傾向は長年、継続している。ちなみにJATA加盟1,307社の中で、訪日外国人旅行セクションを設置しているのは少なく、特に、格安航空券で躍進してきた後発の旅行会社には担当箇所を設置しているのはほとんどない。
<JATA加盟旅行会社 1,307社取扱(2000年度)>
区 分 |
取扱額(%) |
粗利益(%) |
外国人旅行 |
0.52 |
0.74 |
海外旅行 |
43.1 |
42.5 |
国内旅行 |
56.3 |
56.7 |
合計 |
100.0 |
100.0 |
(注)外国人旅行のみ比率を明確にするため、小数点第2位にて表示。
「インバウンドがなかなか伸びない理由は一体なんであろうか。最大の理由は、既存の大手旅行会社がインバウンドをやりたがらないという点ではなかろうか。旅行会社は日本人を海外に送り出した方が収益に繋がる。(略)インバウンド市場はハイリスクであると同時にハイリターンであると確信する」(「観光につける薬」島川崇p.6)。
この種の主張があるが決して的をえていない。現行のインバウンド・ビジネス構造から惹起されるもので、通常、旅行会社は「航空運賃+宿泊+観光+トランスファー」などを取り扱うが、航空部分(60-70%に相当)は海外の旅行会社が扱い、その他を日本側(ランド・オペレーター)が受け持つ。近年のホテルなどによる直販体制で旅行会社を経由しないケースも多く、取扱額も低く利益も少なくなる傾向にある。したがって、海外格安航空券で規模を大きくしてきた旅行会社はインバウンド・ビジネスに手を染めていない。日本としてまた州として、このビジネス・モデルを変えさせることができれば訪日外国人の増加に結びつくことになる。
また、次の振興策がある。インバウンド観光振興に支出した営業費用の一部を政府・自治体が補助する支援策である。この種の支援策で効果を発揮しているのは、オーストラリアのEMDG(Export
Market Development Grants)である。輸出振興策を観光振興にあてはめたものである。当州での実施を考えれば、
@当州のツアー・パンフレット作成費、
A当州の宣伝用海外ミッションの出張旅費、
B関西空港利用ツアー募集経費、などである。しかしながら、この種の支援策は官主導型で弊害も少なくなく、企業の競合力を失わせる危険性をも孕んでいる。したがって、経過措置的支援策とすることが望ましい。支援策は国家がすべきであるが、州として財源を捻出し実現すべきである。
○海外企業・外国人による訪日旅行ビジネス参画への促進 世界の航空会社や旅行会社に「ジャパン・トリップ」を販売させる手法はあるかどうか。日系航空会社・旅行会社を先頭にして、海外企業を日本や関西の観光振興にいかに介入させるか、より熱心に検討すべき段階である。すでに日本に拠点を持つ旅行会社(オーストラリア・カンタス航空関係旅行会社、中国国際旅行社、中国青年旅行社など)はアウトバウンド業務中心であり、これらを訪日外国人業務に向かわしめる手法を考案することである。
○国際会議 国際会議は直接的消費効果、生産誘発効果、付加価値誘発効果、さらには雇用機会の創出効果など開催地の経済的波及効果がもっとも大きいと考えるからである。当州を「国際会議都市」に変身させることである。会議誘致にはハードとソフト両面で力を入れなければならないが、当州はすでにハードに関してはかなりの水準にあるが、ソフト面に関し観光大臣を先頭に海外に負けない水準に持って行くべきである。国際会議誘致のための助成金制度、ガイド・通訳育成支援策などを積極的に講ずることである。
A)「日本のゲートウエイ・関西空港」としての具体的戦略
@「海外直行便誘致策」および「国内利用増加策」
関西空港の着陸料は改めて説くまでもなく、高額による減便や未就航は、単に関西空港のみならず当州産業全体に影響を及ぼすことを改めて認識する必要がある。直行便の飛来が減少するにつれ、航空運賃の高低にも影響が出ている。一例を挙げれば米国同時多発テロ以降、米国籍航空会社による格安航空券は成田発着と比して高額化傾向となっている。
加えて、便数減少により選択肢も少なくなり、さらに関西空港利用が減る現況にある。関西空港完成時には、北海道、東北、日本海沿岸、四国、九州の旅客をも関西空港利用射程圏内とする勢いを有し、まさしく日本のゲートウエイの役割を果たそうとしていた。今に思えば、関西圏以外の人々のメリットや特典を増やすべきであったと考える。ここには関西圏中心主義があったのではないかと考えている。今後、関西空港からのコネクティングに関しては、鉄道やバスをも含めた交通機関の利便性・格安化を目指すべきである。
また、直行便就航メリットとして、外国航空会社によるインバウンド宣伝がある。従来、外国航空会社は日本人観光客のみを対象とし、日本側からのインバウンド旅客の呼びかけはほとんど無かった。直行便就航は相手国内においても政治的・経済的にもインパクトが強い。相手側の宣伝費用のことを考慮すれば、日本政府や当州の観光振興予算をプラスにさせる勘定になる。
Aトランジット客増加策
トランジット客用に関西空港を中心に、英語、中国語、ハングルにての観光バスで3ルートほど開発し無料にて運営する。ただし、旅行会社企画ルートとの競合を避ける。既述のトランジット・ビザを実現させれば関西空港への誘引策となる。関西空港発着のすべての航空会社に「トランジット・プログラム」の企画を依頼し航空会社のスケジュールに発表してもらう。この類似例はシンガポール空港で実施されている。
B)人材育成と登用
@「インバウンド・スタッフ」「外国人マネジャー」「女性のホスピタリティ担当」の増強
○「インバウンド・スタッフ」 現在の旅行・観光産業界は極端なアウトバウンド傾斜が指摘できる。中でもアウトバウンド及びインバウンドの双方業務を担う旅行会社の現行の経営は、既述のようにインバウンド業務の取り扱いは1%以下であり、JATA加盟1,307社のなかで、訪日外国人旅行セクションを設置しているのは少なく、特に、格安航空券で躍進してきた後発の旅行会社にいたっては担当箇所を設置しているのはほとんどない。したがって、現在、インバウンドへの人材シフトと教育が重要である。
○「外国人マネジャー」 当州で優秀な人材、例えば外国人マネジャーを確保するために海外からどうであろうか。労働許可を得るために州として熱意を示すことである。わが国および関西のインバウンド振興会議は日本人だけ集まり種々討議を重ねているが、積極的に日本の観光産業組織に組み入れてはどうだろうか。従来、外国人採用は「単なるスタッフ」採用が多いが、意思決定権者のマネジャー格を迎えることを提言する。国家レベルで言えば、国際観光振興会などの海外事務所所長には外国人を積極的に採用すべきであり、JTBや近畿日本ツーリストなどの大手旅行会社にも部長・課長クラスに採用すべきである。当州の戦略部門にも外国人のマーケティング担当マネジャーを採用する必要がある。
○「女性のホスピタリティ担当」
日本のインバウンド観光産業には女性の進出が少ない。海外旅行を取り扱う旅行会社の店舗や企画担当には、女性が多いがインバウンド振興会議などではほとんど男性である。身近のオーストラリア、シンガポール、香港などでは観光産業においては男性を凌ぐほどの進出ぶりである。むしろ、女性が中心的存在になっている。
A「観光ガイド」「インタプリター」「通訳」「レンジャー」養成
観光産業においてハコ・モノは急作りでも間に合うが、人材育成は難しい。現在でも観光ガイドは不足している。主流の英語ガイド以外に、急上昇している中国語ガイドがある。2002年の日中国交正常化30周年イベントには両国に多くの人々が往来し、中国には約13,000人、日本には約5,000人。日本側の中国語ガイド調達には、台湾の中国人を一部配備したため生活習慣の違いなどが起因し、十分満足するとはいえない日本滞在であったとの報告がある。
また、日本の魅力をアピールしリピーターの訪れる国にするためには、産業観光、エコツーリズム、世界遺産、国際会議、見本市に対応できるガイド、通訳、インタプリター、レンジャーの養成が急務である。また、国際会議都市を目指す当市は十分な数の人材養成を急がなければならない。これらが十分であれば、世界からの訪問者は続くこと間違いない。毎年、日本に1,000万人以上の来訪が実現するにはこの面での整備が不可欠である。従来の欧米人中心マーケットからアジア近隣志向への転換に伴って、アジアの人々の言語に通暁したガイドの多い都市に当然、集まってこよう。したがって、当州でガイド・通訳育成などの独自システムを構築する必要があろう。
B「大学・専門機関でのインバウンド教育」と「グレーター関西ツーリズム州立観光大学」設立 現在、日本には観光学部を持つ大学は3大学しかなく、当州内には1つである。観光科目を有する大学は近年、増加傾向にはあるがインバウンドに主眼を置くよりもアウトバウンド中心の講義展開である。現在の観光産業への就職を希望するのであるから、日本人海外旅行分野の科目のシェアが大きなことは当然である。
今後のインバウンドの活性化は、訪日外国人の振興にシフトした教育と啓蒙をいかに展開させるかがキーとなっている。当州において、全国に先駆けて観光大学を設立し、観光産業でもっとも重要な人材育成に邁進してはどうだろうか。
[W] 終わりに
「関西国際空港と関西の活性化」について検討してきたが、正直のところ、これという決定的な手法はない。現在、関西活性化議論のなかで、関西広域協力論が見られるが、緩やかな結束では現在の関西地域をまとめることは難しい。したがって、「グレーター関西ツーリズム州」を提起し、強い結束のもとでの観光振興を行なうべきであると考える。
一方、インバウンド観光分野での人材難解決が急務であり、外国人の州観光大臣を真剣に考える必要があるのかもしれない。なぜならば、日本人の旅行でなく外国人の旅行でもあるからである。
いずれにしても、アウトバウンドvs.インバウンド=1:1を実現させるためには、日本人いや「グレーター関西ツーリズム州」住民1人1人の「ホスピタリティ(おもてなし)」が重要であることは言うまでもない。
[X] 参考文献
大西正文『観光の時代』創元社、2002年。
島川崇『観光につける薬(サスティナブル・ツーリズム理論)』同友館、2002年。
鈴木勝『国際ツーリズム振興論(アジア太平洋の未来)』税務経理協会、2000年。
(財)日本旅行業協会『旅行業を取り巻く環境と旅行業経営分析』JATA、2002年。
財団法人関西経済連合会『平成14年度事業計画』2002年。
国土交通省『グローバル観光戦略』2003年。
国土交通省『観光振興に関する副大臣会議報告書』2002年。
社団法人日本旅行業協会『インバウンド・ツーリズムの拡大に関する提言』日本旅行業協会、2001年。
財)日本交通公社『JTB REPORT2002日本人海外旅行のすべて』JTB、2002年。
財)アジア太平洋観光交流センター『世界観光統計資料集2001年版』APTEC、2001年。