鈴木 勝 研究室
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大阪明浄大学・紀要
国際トラベルビジネスにおける危機管理」
 
21
世紀における我が国旅行産業への一考察)
  The Risk Management at the international travel business
   -A study of Japanese travel industry in the 21st century-
                                  大阪明浄大学            鈴木
                                  Osaka Meijo University      Masaru SUZUKI
キー・ワード:
・危機管理対応能力   ・リスク・マネジメント     ・安全管理
・海外危険情報     ・危機管理マニュアル      ・国際ツーリズム振興
・旅行産業の社会的責任
 

<序> 旅行産業における危機管理の課題と今後の方向性
近年、旅行者の形態や目的地が多様化し、FIT(個人旅行)化がますます強まる中にあって、旅行産業界では商品自体の低価格傾向に歯止めがかかわらず、加えて格安航空券販売の競争が熾烈化している。とりわけ、これらの現象は海外旅行分野でその徴候が強く、現地における旅行の催行に当たっては何よりも価格が最優先されている。一方、インターネットを通じての旅行商品販売がこの業界に急速に導入され、“中抜き現象”と称されるサプライヤーによる直販体制の進展が顕著で、旅行産業経営をますます圧迫している
 このような旅行産業を取り巻く環境の中で、海外で惹起された内乱、暴動、テロ、地震・台風などの自然災害、航空機や自動車による事故、伝染病、食中毒、行方不明などの突発事故や事件に日本人旅行者が巻き込まれるケースが顕著になっている(参照:表1)。

例えば、1997年エジプト・ルクソールのテロ事件では多くの日本人旅行者が犠牲になり、その対応が旅行会社として適切であったか、現在もなお法廷で争われている。また、1999年のインドネシアにおける政治紛争や2000年5月のフィージーにおけるクーデターに際しては、多くの日本人ツーリストが巻き込まれ、旅行産業界全体はそれらの対応に大きな負担を強いられたことは記憶に新しい。
 一方、日本人が巻き込まれた事故や事件では、発生直後からテレビや新聞では克明に全国報道される。特にパッケージ・ツァーの観光客が遭遇する場合には、旅行会社の対応体制が前面に出され、いわゆる、企業としての「危機管理対応能力」が試されることになる。万一、これらの対応に失敗すれば、企業イメージの失墜に繋がるし、参加者はもちろん、一般消費者の信用を大きく失うことになる。同時に、当該一旅行会社の信頼性のみならず、旅行産業界全体の危機管理への意識及び対応能力いかんが問われることにもなる。

 表1   「日本人が被害者となった海外での事故・事件」(
1997年〜1999年)

区分

発生年

発生国

内容

 

 

 

 

 

 

 

航空機

1997

 

 

 

1998

 1999

 

インドネシア

 

アメリカ

 

ニュージーランド

フィリピン

     スマトラ島でガルーダ・インドネシア航空機が墜落。6名が死亡。

     トーランス市で小型飛行機がビルに衝突し炎上。搭乗していた4名全員が死亡。

     南島マウントクック山付近で小型飛行機が墜落し、2名が死亡。

     マニラ発ルソン島カワヤン行小型飛行機が墜落し、1名が死亡した。

 

自動車

1997

 

 

 

 

 

1999

 

 

フィージー

 

 

スペイン

 

 

アメリカ

 

アメリカ

     ナンディー空港からスバ市内へ向かうマイクロバスがトラックと正面衝突し、3名が死亡、3名が負傷。

     マドリッド〜トレド間で邦人旅行者を乗せたマイクロバスとワゴン車が正面衝突し、8名が死亡、2名が負傷。

     カリフォルニア州で観光バスが谷に転落し、15名が負傷した。

     フロリダ州をレンタカーで旅行中、正面衝突を起こし、2名が死亡、1名が重傷を負った。

列車

1999

イギリス

     ロンドンで高速通勤列車が衝突し、1名が軽傷を負った。

 

 

 

水難

1997

 

1998

 

1999

インドネシア

 

インドネシア

 

ニュージーランド

     南スラウェシ州で邦人ダイバー5名が行方不明。

     バリ島で旅行者1名がラフティング中に行方不明となり、その後死体で発見。

     クイーンズタウンでジェット・ボートが岩に衝突し、1名が死亡、2名が軽傷を負った。

 

 

山岳

1999

スイス

     マッターホルンを登山中の男性が滑落し、死亡した。

その他

1999

ノルウェー

     ブリグスダール氷河で観光馬車が崖下に転落し、1名が死亡、3名が負傷した。

災害

地震

1999

トルコ

台湾

     北西部で地震が発生し、1名が軽傷を負った。

     地震が発生し、2名が死亡した。

 

 

 

 

 

事件

テロ

1997

エジプト

     ルクソールで6名の武装グループが観光客に向け銃を乱射。10名が死亡、1名が重傷。

武力衝突

1997

カンボジア

     二大政党系軍の間で武力衝突が発生。銃撃に巻き込まれ1名が死亡。

 

 

 

その他

1997

オーストラリア

ペルー

     ケアンズ市内で女性が殺害された。

 

     ピフアヤルで、アマゾン河を探検中の大学生2名が殺害された。

 

 

 

 

(資料)総理府編・観光白書(平成10年版〜12年版)から抜粋。
(注意)上記には旅行者以外も含む。

ところで、一般消費者など周囲の危機管理体制の要請に対して、低価格や格安航空券競争中にある旅行産業界では、はたして対応できる意識や管理体勢が持たれているかどうか、今一度検証し、方向性を考える時期であろうと考える。なぜならば、21世紀に入り海外で発生する事故や事件はますます増加の傾向にあるし、また複雑化の道を進むことはたしかである。グローバル化を目指すトラベルビジネスにあっては、さらに強固な危機管理対応能力が要求されることは間違いないからである。
今後の危機管理体制の構築は、一旅行会社だけでは限度があり、産業全体の危機管理対応が必須であるし、我が国の外務省・運輸省などの政府関連機関をはじめとし、外国の政府や観光局との提携も不可欠であろう。旅行産業界や政府関係機関に加えて、一般旅行者の危機への意識や安全対策への啓蒙も同時に要求されることになる。これらの危機管理対応能力を十分備えることは、ひいては国際ツーリズムを振興させることにもなる。さらに発展させればサステーナブル・ツーリズム(持続可能なツーリズム)へと繋がることになろう。本稿では危機管理と密接なかかわりを有する「安全管理」を考究しつつ、危機管理の現状と今後を追及していくことにする。


一.
危機管理の概念と我が国の事情
そもそも「危機管理」とは、軍事的危機に際しての用語として使用されてきたが、現在では軍事的のみならず非軍事的な分野で、大きく論議されるに至っている。まず、一般的に支持されている危機管理の定義をこれと関連する用語を絡めて明快にする必要があろう。

1)危機管理とリスク・マネジメント

「危機管理とは、いかなる危機にさらされても組織が生き残り、被害を極小化するために、危機を予測し、対応策をリスク・コントロール中心に計画し、組織し、指導し、調整し、統制するプロセスである」との定義に従うことにする。一方、「リスク・マネジメントとは、保険や安全対策、さらには経営戦略などを活用して事業の偶発的あるいは人為的な損失(リスク)を発生しないようにし、もしリスクが発生した場合には、それを最小化し、さらに実現したリスクに適切に対処する経営管理の手法」である。なお、ここで述べるリスクとは「一定の社会・経済的な価値を失う可能性、または、一定の社会・経済的な価値の獲得ができない可能性」を指す。また、「危険管理」と称されるクライシス・マネジメント(Crisis Management)が存在するが、戦争、暴動、大地震、広範囲の風水害、コンピュータによる大規模なネットワークダウンなどが対象とされるものであり、全てのリスクが対象とされるリスク・マネジメントの一形態といえよう。

2)
危機管理と安全管理
上記に述べた「リスク」に逆比例する語彙として「安全」がある。「安全は、定義された状況のもとで、あるハザードから権利の侵害(傷害)が生じないための実際的な確実性」であるとされ、「安全管理」とはこの実際的な確実性をコントロールすることにある。平易に述べれば、「事故、危機などが起きないような対策に万全を尽くす」ことになり、このことと危機管理(狭義)との双方を包含し、広義の危機管理と概念付けられている
 ひるがえって、我が国旅行産業における「安全管理」に言及すれば、「安全確保義務(安全配慮債務)」が該当する。これは旅行業法約款では明確な規定は存在しないが、判決(東京地裁昭和631227日)によってはじめて明らかにされている。その義務は「旅行者の身体・生命・財産等の安全を確保するため、旅行目的地、旅行日程、旅行サービス提供機関の選択等に関し、あらかじめ十分に調査、検討し、専門業者としての合理的な判断をし、また、契約内容の実施に関し、遭遇する危険を排除すべき合理的な注意義務」としている。

3)危機管理に対する日本人および企業の意識

  まず、日本人の特性として自衛意識すなわち、警戒心の欠如が指摘されている。それらの理由として、「熱しやすく冷めやすく、過去の災害などを忘れてしまう」、「疑いの気持ちを持たない」、「自分では御すことができない、いわゆる運命論者である」などの日本人の性格を指す人が多い。ささいな例を挙げれば、空港やホテルのロビー、電車の中、待合室などでパスポートや現金盗難の被害に遭遇するなどであろう。次に、日本企業の特性として種々の不明確さが指摘されている。企業方針の不明確さ、責任の所在の不明確さ、専任の組織・担当者が不明確さなどである。したがって、事故や事故が発生した際には直接担当者のミス、操作の誤り、教育研修の不足、管理の不行届き、マニュアルの不備などの理由で処置され根本的な解決に至っていない傾向がある。

二.
我が国の旅行産業における危機管理
1)
危機管理対象の種類とその拡大

 海外で発生した交通事故、飛行機事故、暴動、テロ、地震、災害、伝染病、食中毒、行方不明、盗難など海外旅行客が巻き込まれるケースが増えているのは、絶対数の伸び率とともに、旅行形態が大きな要因でもある。添乗員やローカルガイドの管理下のもとに団体行動をおこない自由行動が少なく、現地の人々との接触する機会が多くなかった時期とは条件が大きく変わってきている。また、次のような指摘もある。「最近の旅行形態の傾向としては砂漠・秘境等を訪問するような安全面から問題となるような旅行企画も増えてきており、また若年層においては、旅行費用を節約するあまり治安状況の悪い宿泊施設に滞在し犯罪に遭遇するケースもみられる」。
外務省邦人保護課の数字によれば、
1998年に在外公館などの取り扱った事件・事故の総件数は、12,818件に上り、前年比較で3.1%増加となっており、また、これはこれまで最高であった1996年の数値を超えて、過去最高となっている。表2に示されている人員ベースのうち、死亡者数は前年比較で2.6%増加の480人を数えている。

   表2  「事件・事故等援護関係統計」(1998年)   (単位:人)

 

総人数

 

アジア

北米

中南米

欧州

大洋州

中近東

アフリカ

事故・災害

5,924

5,550

131

17

62

56

8

100

犯罪加害

391

202

 110

5

 40

16

5

13

犯罪被害

7,463

 

2,043

1,298

296

3,156

403

85

182

疫病

 472

  229

91

17

86

19

6

24

行方不明

321

  161

  67

  6

  61

  19

 2 

  5

その他

5,327

内訳

2,133

1,450

143

1,197

284

67

 53

総数

19,898

 10,318

 3,147

 484

 4,602

 797

173

 377

うち

死亡者数

   480

    239

    117

   11

    67

    32

   2

    12

同負傷者数

   464

 

    175

    99

    19

    96

    36

  10

    29

(資料)外務省邦人保護課調べ ・トラベルジャーナル2000529日号

同時に、事件や事故に関して、近年の特徴として次のような諸点が見られる。
@    
アメリカやオーストラリアにおける自動車事故の多発。
A    
日本には少ない自然体験旅行での事故、例えば、ラフティング、ブッシュウォーキング、トレッキング、気球(バルーン)、スキューバおよびスキン・ダイビングなどに起因した事故の多さ。
B    
各種伝染病や食中毒の発生。前者の例として、バリ島における日本人旅行者のコレラ感染はテレビ・新聞等に大きく取り上げられた。

上記に加えて、近時、危機管理対応上、特異な内容の事件が発生している。
20004月にグァテマラのトドス・サントス・クチュマタン市で生じた事件は、日本人観光客が現地住民の一群から暴行・投石などを受け死傷者を出した例である。事件発生の当該地域には我が国外務省から「海外危険情報」が発出されていたわけではなく、また当該旅行会社が義務付けられている「安全確保(配慮)義務」に則った企画や手配の実施がなおざりにされたわけでもない。このような状況下での事件発生で、当該旅行社としての緊急対応にはかなりの労力を強いられた結果となる。
 これは旅行会社が関与し得ない事由での事件も危機発生に際しては適切な対応が望まれる事例であるし、一方、外務省による危険情報が発出されていないからといって、そのデスティネーションの安全性が保障されていることにはならないという一例である。自由行動が増加傾向にある昨今のパッケージ・ツァーでは旅行会社がコントロールできない時間帯が急増し、この種の事故や事件の発生率は高くなる。したがって、旅行産業にとっては現在以上の危機管理対応が望まれる所以でもある。

2)
「危機管理」および「安全管理」対応の現況
 一般的に事故や事件に遭遇した時の旅行会社にかかる負担は甚大である。発生した現地での対応はもちろん、日本における留守宅の家族のケア、関係機関との調整、詰めかけたマスコミの対応など同時的に発生し、海外支店を持つネットワークの広い、人的にも比較的に余裕のある大手の企業でさえ、緊急時の迅速な対応や処理は大きな課題となっている。この状況を考えれば、中小規模の旅行会社にとり事故・事件に直面した場合には、日常の営業活動も中止せざるをえなく、事故倒産も招きかねなくなる。

ところで、旅行会社催行ツアーにおける海外での事故や事件の対応は、原則的には当該旅行会社の対応領域になっているが、旅行会社の一部には事故や事件が発生すると、在外の大使館・領事館に多くを依存するケースも少なくない。したがって、事故が発生した場合に、「信頼のおける旅行会社の事故で助かります」という、在外大使館・領事館の担当官の本音も無理からぬ事実でもある。ここでは、信頼されるとする旅行会社の一般的な危機管理および安全管理対応の現況を考究することにする。


A)システムの構築と危機管理マニュアルの作成
 危機管理の方針と手続きを定める必要がある。「危機に対して、@平常の準備―悲観的に考え楽観的に行動できる体制づくり、A初動対応能力、B再発防止ができている状態を作り上げなければならない」、また、「悲観的に準備し、楽観的に対応せよ」「悪い情報ほど早く報告せよ」0)とかの心構えが説かれている。ここでは具体的な内容を考究していく。

@平常の準備    緊急対応の組織図を含んだ危機管理マニュアルの作成、勉強会や模擬訓練の実施、保険に関する予備知識などである。危機を乗り超えられるかの是非は平常時にいかなる体制であるかによるといっても言い過ぎではない。

A危機管理マニュアルの例
 
図1の緊急対応組織図は、当該旅行会社のツアー客が実際に死亡・傷害・疾病あるいは巻き込まれたケースの場合にこの種のマニュアルにしたがって行動することとなる。あらゆる場合に当然、顧客・人員をそして安否を迅速に正確に把握しなければならない。状況に応じて、旅行中止・帰国命令を出す必要があろう。

ところで、事故や事件に関しての政府関係官庁への報告が旅行会社に義務づけられている(199641日・新旅行業法の施行に付随して)。旅行業者は自らが取り扱った旅行において、次の事故の発生を知った場合には登録官庁に対して、第3号様式の所定の事項を記載して報告しなければならないとしている(「運観旅第74号通達の第14−3」)。
イ)
死亡者が発生した場合
ロ)
10名以上のけが人が発生した事故
ハ)
ハイジャック
ニ)
その他社会的影響が大きいものと旅行業者において判断したもの 

B「発生初動期の対応」  事故および事件の対応には「発生初動期の対応」が一番大事とされる。「一度見誤ると、その後の処理の流れが大きく狂う」とされる。「初動期の対応」のポイントは下記のようになる。 

<事故発生初動期>
    
「対応責任者」…通常時から明確にする必要がある。また、責任者不在時の代替者を明確にすること。これらを全員に周知させておくこと。したがって、平常時から、対策本部の組織化および図式化などを心がけることである。
    
「事故発生時における情報収集」…可能な限り、複数の情報を取り、情報源を十分に確認すること。5W1Hを明確にするために、緊急マニュアルにはフォームを作成するとよい。
    
「情報メディアの最大限の活用」…インターネット、パソコン通信、地元新聞など、分かっている事実だけを正確に把握・伝達すること。
    
「緊急対応体制」と「通常対応体制」との両立が必須である。とかく、緊急対応に翻弄されることが多い。
    
「決断・決定事項は完遂すること」…複数顧客の事故の場合、対応に差異が生ずると、後日トラブルの原因を惹起することになる。

B)外務省発出の「海外危険情報」への対応
 日本の外務省の発信する「海外危険情報」は1997年に大幅に基準を改定され、きめ細かくなっている。従来の「渡航情報」、「退避勧奨」および「退避勧告」を統合し、「海外危険情報」と総称し、また、渡航あるいは滞在に当たって通常以上の特別な注意が必要な国・地域の治安状況等を5段階の危険度に区分し、「注意喚起」、「観光旅行延期勧告」、「渡航延期勧告」、「家族等退避勧告」、「退避勧告」の5種類とする。

表3 外務省の「海外危険情報」(1997年・改定)

危険度1

注意喚起

当該国(地域)への渡航、滞在に当たって通常以上の特別な注意が必要とされることを通報し、必要な安全対策について注意を喚起するもの。

危険度2

観光旅行延期勧告

当該国(地域)への観光等を目的とする不急の渡航の延期を勧めるとともに、現地に滞在している邦人に対しては「観光旅行延期勧告」が発出されたことを周知の上、状況に応じた注意を払うよう勧めるもの。状況により、旅行者の出国を勧める場合もある。

危険度3

渡航延期勧告

当該国(地域)への全面的な渡航の延期を勧めるとともに、現地に滞在している邦人に対しては「渡航延期勧告」が発出されたことを周知の上、状況に応じた注意を払うよう勧めるもの。 状況により、現地に滞在している邦人のうち事情が許す者の出国を勧める場合もある。

危険度4

家族等退避勧告

危険度3「渡航延期勧告」の趣旨に加え、当該国(地域)よりの退避、引き揚げに必要な準備を行うよう勧めるとともに、現地に滞在している邦人のうち家族等の事情が許す者に対しては、安全な国(地域)への退避(本邦への引揚げを含む)を勧めるもの。

危険度5

退避勧告

危険度3「渡航延期勧告」の趣旨に加え、現地に滞在している全ての邦人に対して当該国(地域)より、安全な国(地域)への退避(本邦への引揚げを含む)を勧めるもの。

 「海外危険情報」に対応する要領は、各旅行会社は独自の取扱基準を作成して、「主催旅行」と「手配旅行」を区別し実施している。主催旅行の場合を取り上げれば、下記の基準化が一般的である。

*「危険度1・注意喚起」  通常どおり催行。
@    
契約前において・・・販売店は旅行客に、具体的な注意内容を記載した外務省の発出の書面を渡し、注意喚起地域であることを説明する。
A    
契約後〜出発までの間・・・@と同様のことを説明する。
B    
旅行実施中において・・・主催会社が添乗員や現地支店を通じて、@と同様に説明する。
*「危険度2・観光旅行延期勧告および危険度3・渡航延期勧告」

@    
催行中止をする。ただし、この場合には取消料金は収受しない。
A    
実施中の旅行については・・・勧告が発出された時点で、旅行客に説明し、できるだけ早く旅程変更を行ない、当該地域から離れる。
*「危険度4・家族等待避勧告」および「危険度5・待避勧告」の場合の取扱は、「観光旅行延期勧告」、「渡航延期勧告」と同様とする。
 

なお、手配旅行の場合にも主催旅行に準ずるが、契約責任者である旅行客に旅行の実施をするか否かの判断を求める点で大きな差異を持つ。したがって、「危険度2」、「危険度3」における旅行の取りやめは旅行客の意思により実施し、取消料金なども旅行客負担とする。

ところで、外務省は「法令上の強制力をもって渡航を禁止したり、退避を命令したりするものではない」と「海外危険情報」を位置付け、旅行者自身の「自己責任原則」に基づくと述べている。一方、観光行政を管轄する運輸省からは、「現行区分では『観光旅行自粛勧告』(危険度2)以上の発出をもって、主催旅行の新たな出発は中止、すでに出発後であれば、対象地域への旅行を避けるか、日程を中断して帰国することが、事実上義務付けられている・・・0」」。危機管理の観点から、運輸省による判断は外務省の情報に基づいたより慎重さのある手段である。(なお、「注意喚起(危険度1)」の段階であっても、主催旅行の参加者には書面の交付を行うことを通達で義務付けている)。両省の違いが現実に存在している。

ところで、当該危険情報に関して、外務省としてはどの程度の規模で、いつ頃まで続くかどうかなど在外公館長に判断を求めるが、主要各国の対応などを斟酌し最終決定は外務省本省が下すことにしている。発出、継続などにあたっては、当該国との二国間関係も配慮される場合もある。原則として、「海外危険情報」を3ヵ月毎に見直し、状況に大きな変化が生じなくても「継続」としての情報を再発出し周知徹底を図っている。しかしながら、外務省の危険度発信のタイミングが実際面と合致しないケースも時には生じている。たしかに危険度のランクを下げる緩和や解除に踏み出す具体的な事実や証拠を示せる場合は稀であり、したがって時間がかかることは肯定できよう。発出よりむしろ困難なケースは緩和と解除と言えよう。

発出や解除に関して、主要な国々が観光旅行に対して発出していない、もしくは解除しているのにかかわらず、なぜ日本だけが制限しているのか1)、あるいは事件などが発生している地域とかなり離れた地域でありながら危険情報の対象となっているのはなぜであろうか2)、と我が国旅行業界や相手国から疑問を呈せられたこともある。
外務省の「海外危険情報」の影響を受け、我が国旅行産業界が、営業的に苦境に立たされる場面が生じているケースは少なくない。


C)「安全配慮義務に則った旅行の催行」
既述の判決(東京地裁昭和
631227日)から明らかにされた義務であり、具体的には下記のような内容となろう。
@「旅行企画に当たっての安全に配慮したプランおよびその実施」  主催および手配するツアーに対しては、企画・現地・販売個所は各種情報(特に安全面に留意し)を収集し、プランニングや実手配を行わなければならない。
A「各種安全情報の提供」  外務省発出の「海外危険情報」などに即応した取り扱いをすることになる。
B「緊急の際の対応」  旅行実施中における事故・事件発生時に際しては、緊急体勢で可能な限りの対応を行うこととする。

AおよびBに関してはすでに述べたが、ここでは@について触れることにする。近年の低価格化などの影響で種々の問題提起がなされている。例えば、低料金で契約した海外のバス会社やボート会社が引き起こした事故、または正規の営業ライセンスのない土産品店所有のバスによる市内観光やトランスファー中の事故など、これらはアジア諸国だけでなく、他の地域でも見られ危機管理の観点からも問題をはらみ、事実、事故発生に際しては補償などで問題が生じている。

一方、危機管理や安全管理に関し入念に注意を払う旅行会社もある。特に、特定地域に強い旅行会社は治安問題を重視し、危機管理に関しての意識が強いことが特徴であり、入念な対応策を講じているケースが多い。例として、トラベルジャーナル誌によるツアー・オブ・ザ・イヤー1995でグランプリ賞を受賞した「ユーラシア大陸横断50日間バスの旅3」」の企画・催行に際しては、催行前の数年間、長期間の現地情報収集、入念な企画検討、現地踏査などの安全管理・危機管理対策が実施されたことが報告されている。

(D)「海外販売オプショナル・ツアーにおける安全管理」
旅行会社が自社のツアーに参加した顧客に、現地オプショナル・ツアーを販売するケースが多くなっている。ツアーの多様化と販売増加により、アクティビティー中の事故が増えている。危機管理の一環として、一定の「安全基準」を設けられていることが一般的である。我が国旅行業法・約款では、主催者が現地法人の場合には、募集パンフレットにあらかじめ主催者名と準拠法が明記されていなければならないとする。これは日本の旅行業法や約款には従わないことを明示する必要があるからである。企業により「現地申し込みオプショナル・ツアー」販売に対して、下記のような危機管理の一環としての安全基準を設定しているケースもある。

    
ツアー主催者は当該地域の法令・官公署による各種の指導(衛生基準や営業許可など)を守っていること。万一、これらの指導がない場合には、過去1年間に旅行者に人身事故などの重大な事故が発生していないこと。
    
ツアー主催者は事故が発生した時に、責任者が明確であり、緊急対応が可能なシステム作りを行っていること。
    
ツアー主催者は、一定水準の賠償責任保険に加入していること。

一方、現地での販売に関しては、下記の事項を明確に顧客に伝えるものとしている。
@現地ツアーは、催行会社の安全管理義務や事故が発生した場合の責任範囲などは現地法に従うこと。
A参加・不参加は顧客自身の判断であり、特に危険を伴うスポーツにおいては、安全管理は顧客が行うこととする。
また、上記判断基準に加えて、事故が発生した場合の販売中止や再度、販売開始を行う判断は事故そのものの内容・原因・改善実態を見極めた上で、総合的に行うことが一般的に実施されている。

(E)海外支店における危機管理
 最近の国際トラベルビジネスの展開に関して、旅行会社の海外支店4)の動きはその先兵的役割を持ち、ますます激しくなっている競争に打ち勝つキーとなり、また危機管理面からも重要になっている。その海外拠点としての機能は、旅行会社の規模の大小もあるが、一般的に下記の項目が包含される。
・地域経営機能        ・情報収集機能
VIP(重要顧客)対応機能  ・CS機能
ランド・オペレーター機能(インバウンド・ツアー)
・発営業機能(アウトバウンド・ツアー)
・旅行関連事業開発機能(旅行周辺ビジネス 例:バス会社、土産品など)

担当国・地域の観光プロモーション活動機能
危機管理対応機能
 総じて、日本の本社や営業店舗との連携強化により、グループ全体の営業強化を図る機能が期待されている。特に、近年において事故や事件の多発、海外修学旅行の増加などの事情で「危機管理機能」の充実が強く求められるようになってきている。しかしながら、旅行会社の経営的観点から在外拠点の整理統合、撤退が進んでいる実態がある。その整理・統合・撤退の対象となる地域は営業上問題とされる拠点ではあるが、危機管理対応面で必要とされる拠点が多い。例を挙げれば、インドシナ半島のベトナムやミャンマー、また中国などである。日本の旅行会社で拠点進出を行ったが、後年経営上等の観点から撤退、縮小を実施している事例もある。今後は、危機管理面と営業的観点からどのように拠点展開させるか、国際トラベルビジネスとしての大きな課題でもあろう。
 海外拠点の機能のうち日本でコントロール可能な事項も多いと考えるが、危機管理対応の働きは現地に熟知していない限り十分な働きを行い得ないことを、撤退や縮小に際してはより考慮すべきものと考える。

一.危機管理と国際ツーリズム振興
旅行上、「危機管理」および「安全性の確保」が、いかにツーリズム振興に貢献するかをここで検討する。なぜならば、日本人にとり外国旅行への阻害要因を調査すれば、「安全への危惧」がトップに位置しているからでもある(参照:表3)。特に、堅実な伸びを示すOL、ファミリー層や滞在型旅行者にとって、特に阻害要因となっている。したがって、「安全面」を強力にPRすることにより、ツーリズム振興が図れ、競合するデスティネーションを凌駕する決め手の一つともなろう。

                          図3      海外旅行の阻害要因                                               

 

1999

   治安が心配である

  36.0 %

   言葉に不安がある

35.8

   食べ物が合わない

31.7

   費用がかかりすぎる

29.0

   健康に不安がある

28.7

   (資料)財団法人日本交通公社「海外旅行志向調査」

「『旅行費用の問題』、『言葉の問題』は日本側の商品開発の如何によって解決可能な問題であるが、治安の問題は日本側では如何ともしがたい問題である。治安に対する不安の問題はテレビなどの報道機関から伝えられたニュースによるものであり、受入国側の観光宣伝の効果を大きく減殺するものである5)」と言及している如く受入国の危機管理対応が、より強く要求される。対応いかんにより、ツーリズム振興に大きく貢献することもあれば、一方、対応が不十分で著しく国際的信用を落しめツーリスト数を減少させたケースが少なくない。
 例を挙げれば、1995年に生じたインドネシアでの「コレラ事件」がある。ある面では、政府や政府観光局の対応が、長期間、長引かせた原因ではないかと思われる。「日本マーケットはセンシティブであり、1995年にはコレラ騒ぎで日本人だけが来島しなくなった…6)」と述べ、または、「コレラは存在しない」と否定し続けたが、もし事実関係の早期発表を行ない迅速な対応にでていれば、ツーリズム復興はより早められたのではないかと思われるケースである。
  また、異なる事例であるが、197〜8年にかけてインドネシアを原因とするヘイズ(煙害)禍のためアジア近隣諸国の多くが影響を受け、ツーリストが激減した。しかしながら、そのヘイズに対する各国政府観光局の危機管理対応には差異が存在した。各国の危険情報の解除へ向けての努力に懸命な国家や政府観光局がある一方、不熱心と見られる国もあったことは事実である。このようなケースの場合、常時、情報を捉え、海外の旅行会社やメディアなどへ発信を試みる必要があろう。この違いによりツーリズムの復興の差異が生じることになる。 

. 21世紀の旅行産業における危機管理
1)
危機管理システムの再構築
@旅行会社    いずれの企業にとっても、我が社では発生しないもしくは、関係がないなどとの消極的意識を持つことなく、「必ず、いつかは発生する」との意識で、危機管理体制の強化に取り組むべきである。また、低価格志向の中にあって、「安かろう、危なかろう」のツアーを排除し、「質の高い商品」の販売を目指していかなければならない。そのため、各企業とも危機管理や安全管理対応には今以上の時間と資金を投入すべきであろうと考える。質の高い商品の販売を行うことは、すなわち社会的評価や信用を得ることに結びつこう。対応の失敗に起因し、一旦失墜した信頼を回復するには、いかなる保険を付保しようと返らないものが多いし、たとえ、回復しようとも日時と費用が掛かるものである。

方法論として下記の指針が具体的、実践的である。「組織の最高責任者層が危機管理方針を決め、その実現のための計画
(PLAN)を立て、次にそれを実施・運用(DO)し、その結果を点検・是正(CHECK)して、不都合があれば改善・見直し(ACT)を行ない、再度計画を立てる『PDCA』の危機管理サイクルをつくりあげることである7」」。
この危機管理指針に照らした場合における、旅行会社に存在する課題をいくつか掲げてみることにする。
* 旅行会社による「海外危険情報の積極的開示の必要性」   「今後一層、旅行の内容・品質・旅行を取り巻く情報等の開示の要請が強まってくることが予想される。消費者の自己責任の確立、また旅行業者のより高い信用確立のために、従来ともすれば、旅行業者の認識が希薄で、またデメリットとして見られていた『海外危険情報』の積極的な提供を・・・切望する・・・8」」。この指摘に沿った姿勢が今後、さらに必要とされる。
* 旅行会社における危機管理に対する専門家の配備および養成   既述のごとく危機管理対応には知識、経験、ノウハウなどを有する専門家の配備が必須であるが、営業優先による人事異動などではこの事情が軽視される場合が少なくない。同時に、企業内における危機管理講座の開催なども最近の収益中心主義に引きずられ、不十分になりがちである。
* 「旅行会社の部門分離から生ずる課題」   企業組織の拡大、もしくはその対策としての分社化の実施で、企画造成担当者とセールス担当者との情報収集の差異や意識の乖離である。重要な海外危険情報が発出せられているにもかかわらず、販売側ではその情報を得ていないケースが該当する。企業一体の、危機管理意識の昂揚を高める必要があろう。
* “旅行プロ”としての意識   コスト削減の影響を受け、現地事情の把握が不十分なケースが少なくなく、いわゆる「ランド・オペレーター依存型」も多く、旅行催行者としてのプロフェッショナルな知識が今後さらに消費者から求められるであろう。

A旅行産業全体
 危機管理対応に関して、旅行会社一社だけでは今後ますます限界が生じてくるであろう。したがって、業界合同の危機管理は必須となろうし、海外観光関係者との常日ごろの緊密な連携が重要であるし、時にはミッションや下見団の派遣も効果がある方法論である。また、政府機関(日本の外務省・運輸省など)とのパイプも重要である。このような観点から、2000年を迎えるに際してのコンピュータ上における「Y2K問題」は官民共同による危機管理対応の模範の一つであろう。また、最近スタートした民間レベルの「OTOA9」ドット・コム」はランド・オペレーターの立場から、積極的に現地情報提供を「海外危険情報」を発出する外務省に対して行うものであるが、今後、信頼できる補足資料として有効性が期待できると考える。

2)旅行会社と消費者
 事故やトラブル発生の原因を探求した場合に、旅行者の認識不足やモラルの欠如に起因している場合が少なくない。近年、旅行形態として団体からFIT志向が急速に進む一方、ヤング層に見られるように短期型から留学やワーキング・ホリデーなどのような長期型に変化している。同時に、格安航空券やペックス運賃(個人回遊運賃)の旅行者が増加している。したがって、旅行産業は旅行者に対する危機管理の意識や自己責任主義を訴えることに、今まで以上に力を入れる必要が生じている。一方、外務省はホームページで海外渡航情報を積極的に流すとともに、2000年から「海外安全週間」の実施予算を拡大させ、キャラバンを組み、地方都市で海外安全セミナーを開催している。

<むすびにー適切な危機管理は旅行産業の社会的責任ー>
 危機管理の適切な実行により事故率を減少させる効果があり、このことは社会的費用の削減を意味する。近年の好適な事例として「Y2K問題」がある。入念な危機管理対応の結果、旅行産業のみならず社会全体として、予想された事故やトラブルも発生せず社会的損失を蒙ることなく終了した。旅行会社としてまた産業界として、社会的責任を果たしたといえる。

  21世紀に入り、ますます社会的責任を負うべき場面が出てこよう。その一つといえる環境上の負荷を軽減させる、または改善する運動を開始し、「ISO14001」を旅行会社として初めて取得したケースがある0)。これも社会的責任を果たす一つの方法であり、危機管理対応の一形態である。かくして、拡大傾向にある旅行産業として社会的責任の遂行がますます求められてくることになる。
了。

 「参考文献」
<一般書>

「リスク・マネジメントと危機管理」   (中央経済社 武井勲著)

「リスク・マネジメント入門」      (日本経済新聞社 高梨智弘著)
「企業危機管理」            (ダイヤモンド社  三島健二郎著)
「企業危機管理の理論と実践」      (中央経済社  大泉光一著)
「企業リーダーのための危機管理マニュアル」(風雅書房  魚津欣司著)

「危機管理途上国日本」         (
PHP研究所  大森義夫著)
「よくわかる旅行業界」         (日本実業出版社  小島郁夫著)
「海外旅行マーケティング」       (同友館 津山雅一・太田久雄著)
「旅行の法律学」            (日本評論社 佐々木正人著)
「国際ツーリズム振興論」        (税務経理協会 鈴木勝著)
<白書・ハンドブック・辞書・雑誌類>
「観光白書」(平成
10年版・11年版・12年版) (大蔵省印刷局発行)
「週間 トラベルジャーナル」      (株式会社トラベルジャーナル)

「日本国際観光学会論文集」       (日本国際観光学会発行)

「世界と日本の国際観光交流の動向」(国際観光サービスセンター発行
JNTO編著)
JTB中国旅行10年史」        (株式会社JTB中国旅行)


1)「最近のサプライヤー、特に航空会社とホテルにおける直販の動きは旅行業界全体の収益力の低下に直結している。それを加速度的にすすめているのが、マイレージ・バンク、ペックス運賃、インターネットによる予約システムなどである」(津山雅一・太田久雄共著『海外旅行マーケティング』同友館、2000年、118ページ)と指摘している。
2)
「バブル経済崩壊以後の渡航者数の伸びに比較すると、海外で犯罪に巻き込まれて死亡する者の方が、その増加率が高い・・・」佐々木正人「『海外危険情報』の提供に関する法的考察」(『日本国際観光学会論文集第6号』、199812月、73ページ)。
3)
武井勲著『リスク・マネジメントと危機管理』中央経済社、1998年、15ページ。
4)高梨智弘著『リスク・マネジメント入門』日本経済新聞社、1997年、28ページ。
5)         同上                    27ページ。
6)武井勲著『リスク・マネジメントと危機管理』中央経済社、1998年、104ページ。
7)大森義夫著『危機管理途上国日本』PHP研究所、2000年、30ページ。
佐々木正人著『旅行の法律学』日本評論社、1996年、18ページ。
総理府編『平成10年度 観光白書』大蔵省印刷局発行、1998年、110ページ。
10武井勲著『リスク・マネジメントと危機管理』中央経済社、1998年、16ページ。
11)大森義夫著『危機管理途上国日本』PHP研究所、2000年、10ページ。

12『ウィークリー・トラベルジャーナル』2000年6月19日号  30ページ。
13)事例として、インドネシア紛争(1998年から1999年)。1998514日に全インドネシアに海外危険情報「危険度2」が発出され、リゾート地・バリ島も含めて、日本からの主催旅行は並べて催行中止となる。一方、オーストラリアなど多くの国々には、バリ島を除く措置〜すなわち、バリ島はジャカルタなどと異なりより安全である〜を取ったために、当該リゾートには日本人は少ないが、オーストラリア人などの外国人は多いという実態となった。
14)事例として、インドネシア紛争(1999年)でのビンタン島やフィージーのクーデター(2000年)におけるナンディー。
15)株式会社JTB中国旅行による企画ツアー。このシリーズは1995年に初めて企画され、20008月まで15回を数える。中国の西安からトルコ・イスタンブールまでのシルクロード14000キロを50日かけて横断する内容(シリーズ中、55日間になることもある)である。
16)この海外支店には中国など営業行為を行わず、危機管理機能や情報収集機能を主として有する「連絡事務所」をも包含してよいであろう。
17)丸木正登「海外旅行の安全について」(『日本国際観光学会論文集第3号』、199511月)74ページ。
18)
「バリ州政府観光局コメント」『ウィークリー・トラベルジャーナル』19997月12日号。
19)大森義夫著『危機管理途上国日本』PHP研究所、2000年、115ページ。
20佐々木正人「『海外危険情報』の提供に関する法的考察」(『日本国際観光学会論文集第6号』、199812月)73ページ。
21「日本海外ツアーオペレーター協会」による国内最大の海外安全情報ニュース。
22)
ISO14001とはISO(国際標準化機構)が制定を取り組んでいる「環境管理システム」「環境監査」などに関する国際規格「ISO14000シリーズ」の中で、環境管理のマネジメント・システムを対象としたものである。ホールセーラーの「JTBワールド」が199912月に認証を取得した。